昭和二二年八月、わが練馬区は東京都二三番目の特別区として誕生いたしました。
当時は、人口約一一万、年間予算約一億の規模でありましたが、それから三〇有余年、現在では、人口約五六万、年間予算も約一千億という大都市となっております。
区制施行三〇年の記念事業として、『練馬区史』の編さんに着手したのは、昭和五三年四月で、爾来、関係各位の多大なご尽力によって、昭和五五年三月には、まず『現勢資料編』を、ついで昭和五六年一〇月に『現勢編』を刊行いたしました。
『現勢資料編』は練馬区三〇有余年の歩みを数値・統計によって知りうるように、また『現勢編』は、それらの数値等をもとにしつつ、区勢の推移を行政分野別に叙述化したものであります。
今ここに、『歴史編』を発刊してこの事業は完了いたします。
歴史は人によって作られるものであり、人から人へ伝えられ、引継がれていくものであります。
特別区としての練馬区三〇有余年の歩みは、悠久の過去から永却の未来へ向って連綿と流れる歴史の
中では、まさにほんの一瞬のことでありましょう。しかし、いよいよ生生発展を続ける現在の練馬区は、多くの先賢の血と汗の辛酸がその基盤になっていることは、今更あらためて申すまでもありません。
練馬区が将来の一層の躍進を期するためには、古代からの郷土にかかわる自然環境とともに、それら先賢の遺された偉業を知ることこそ肝要であります。
そこに、今般の『歴史編』を含めこの『練馬区史』三部作の意義があります。
今こうして、『練馬区史』の編さん事業を終了するに際して、私は、練馬区民であることに大きな喜びと誇りを感じます。
そして更に、区民各位から区政運営を委ねられていることについての重責を今更ながら痛感いたします。
区勢進展と区民福祉向上のため、各位がこの『練馬区史』全三巻を座右の資とされて、旧に倍するご指導とご協力を賜わるよう切にお願いするものであります。
実質五年にもおよぶ長期間、ぼう大な資料の収集、整理分析、執筆、校正と筆舌に尽しえぬご労苦を賜わった主任編さん委員、早稲田大学名誉教授滝口宏先生には、衷心から深甚な感謝と敬意を捧げます。
特に、先生が再度不慮の重病にかかられながらも、終始率先してご精励をいただいたことには、まこ
とに畏敬の念を禁じえません。また、滝口先生の代行として、あるいは実務の中心となって格段のご高配を賜った松下正已先生をはじめ、区内在住の郷土史研究の権威である島野伝五郎先生、桑島新一先生等の各委員並びに調査員各位の多大なご尽力に心から厚く御礼申しあげます。
そして更に、幾多の貴重な資料を快くご提供くださった各官公署、諸団体、その他多くの方々に対し、深く感謝申しあげます。
ここに、この『歴史編』発刊をもって、練馬区史編さん事業を完了するに際し、わが練馬区がいよいよ隆昌し、区民生活がますます向上することを心から祈念して序文といたします。
昭和五七年一一月
練馬区長