1 | |
同盟の使命と活動
| P.0002 | 1944年 | 【本文】|目次|第一 同盟の國家的使命 五|對外思想戰の中樞機關 五|思想戰の原動力 五|思想戰の三大武器と兵器廠 六|國家目的と報道の組織化 六|第一次世界大戰の苦き經驗 七|國家代表通信社 八|世界に比なき同盟の組織 一〇|通信社の世界的連繫と同盟 一〇|第二 同盟の生れるまで 一二|通信自主權獲得の苦鬪史 一二|英國の屬領に等しき屈辱 一二|痛憤、ロイターの跳梁 一三|通信不平等條約の打開 一四|着々對等契約獲得 一五|遂に通信自主權確立 一五|苦鬪四半世紀、同盟の成立 一六|大東亞戰爭を戰ふ同盟 一七|第三 同盟の報道組織 一八|第四 同盟の國內活動 二〇|廣汎複雜な取材活動 二〇|ニュースの整理と編輯 二二|同盟ニュースの頒布 二三|市內同報電話 二三|長距離專用電話 二四|國內無線同報 二五|豫約電話 二六|船舶無線同報 二八|同盟の特別通信 二八|同盟と新聞社 二八 |
2 | |
同盟の使命と活動
| P.0003 | 1944年 | 【本文】|同盟と放送局 三〇|第五 同盟の對外活動 三一|世界に呼びかける同盟 三一|對外無線同報 三一|方向每にニュースの砲彈 三二|敵國側も競つて受信 三四|外國特派員の指導と援助 三六|第六 大東亞に活躍する同盟 三七|東亞報道通信圈の主導力 三七|東亞を結ぶ大通信網 三九|南方の對外報道戰 四〇|報道の戰士――前線班 四〇|滿洲國通信社 四二|第七 世界報道戰上の同盟 四三|海外特派員の活躍 四三|通信の世界的連繫に戰ふ 四四|第八 同盟ニュースの世界的反響 四六|敵國側に强力に浸透 四六|威力を發揮する無線同報 四六|對敵戰果の實例 四七|敵の宣傳反攻を完封 五〇|第九 同盟の經濟及び時事通信 五一|思想戰遂行の一翼 五一|經濟界の羅針盤 五一|產業別經濟通信 五二|東亞經濟通信 五三|海外經濟通信 五三|時事通信 五四|第十 同盟の寫眞報道戰 五五|思想戰の直擊彈 五五|決死の報道寫眞 五五|報道寫眞の輸送と速報 五五|內外寫眞電送 五六 |
3 | |
同盟の使命と活動
| P.0004 | 1944年 | 【本文】|同盟寫眞の發行量 五七|第十一 同盟のその他の活動 五八|同盟の戰時調査室 五八|同盟の出版活動 五八|同盟とニュース映畫 五九|同盟の航空部 六一|同盟の技術研究所 六一|〔圖表目次〕|同盟國內通信網 二七|同盟對外報道戰要圖 三三|同盟東亞通信網 三八 |
4 | |
同盟の使命と活動
| P.0005 | 1944年 | 【本文】|第一 同盟の國家的使命|對外思想戰の中樞機關| 同盟は日本の對外思想戰の中樞機關として、皇國の大義を世界に宣揚するため、日本の眞意と實相とを全世界に報道してこれを周知徹底せしめ、同時に世界各國の動向と實情とをわが國に傳へて、國民の認識と國家の施策とに資せんとする重要使命をもつて設立せられたわが國の國家代表通信社である。| 現下の大東亞戰下、同盟はこの使命達成のために、わが國に於ける內外報道の集散中樞機關として中央地方を通じてニュースを交流する國內通信網を整へ、東亞全域にわたる通信網を完備して大東亞報道通信圈の主導力たると同時に海外各國にゆきわたる世界通信網を通じ、武力戰に呼應して、全世界に對し積極果敢なる報道思想戰を展開し、米英を主力とする敵性宣傳を粉碎して聖戰完遂に邁進してゐるのである。|思想戰の原動力| 近代戰爭において思想戰の重要なことは改めていふまでもない。現にこの大戰下、敵米英はもちろん世界各國は日夜入り亂れて鎬をけづる思想戰に火花を散らしてゐるのである。| 思想戰とは、ひと口にいへば相手方の思想をわが方の思想に一致させる戰ひであつて、その原動力となるものはニュースである。卽ち日々生起する事實の報道である。けだし個人の思索行動はもとより、常に國民思潮の基礎となり國際輿論の根柢となるものは全世界にわたつて日日發生する事實の報道である。所謂デマ宣傳は一時は人を瞞着することはできてもやがて正體 |
5 | |
同盟の使命と活動
| P.0006 | 1944年 | 【本文】|を暴露して無力となり、さらに逆效果を生むにいたるのはそれが事實でないからである。敵がいかに巧妙な謀略宣傳を行はうとも、わが方がそれを覆す嚴然たる事實を强力に報道するならば彼の僞瞞を暴露して信を世界に失はしむるのみならず敵國民の思想を動搖し崩壞し遂には我に屈服せしむることができるのである。實にニュースこそ思想戰の原動力であり砲彈である。|思想戰の三大武器と兵器廠| 武力戰に種々の兵器あるごとく、ニュースを砲彈とする思想戰にも武器がある。卽ち文字に讀む新聞、耳に聽くラジオ、眼に見る映畫これが思想戰の三大武器である。これを近代兵器にたとへるならば新聞は戰車、ラジオは飛行機、映畫は潜水艦ともいへるであらうか。これらはいづれもニュースを原動力とするのであるが、これに對し通信社はまさに兵器廠――砲彈製造所の役割を果すものである。この三大武器に命中確實な砲彈――卽ちニュースを國內は勿論全世界にわたつて、正確迅速に供給し、以て敵の思想陣を擊破すべく世界的規模において戰ふもの、それが國家代表通信社である。|國家目的と報道の組織化| かやうに事實の正しき報道こそ思想戰の原動力であり砲彈であるが、しかし、これを放縱に無統制に放置しておいたのでは、組織なき軍隊と同樣にそれ自身無力であるのみならず、報道の紛雜から却て各國の誤解を誘致し、時には國內をすら混亂に導くやうな結果を招來する虞がある。そこで報道は、常に國家目的に合致し、國家の機能と脈絡し、戰爭の現情勢に卽應するごとく組織され、武力戰と一體化して機動的に |
6 | |
同盟の使命と活動
| P.0007 | 1944年 | 【本文】|行はれねばならない。このことは現下の世界情勢に直面して國家の存立を維持する上から必然に要求せられるのであつて、現に世界各國はいづれも國內における報道を統制するとともに、國家的に組織された單一强力なる通信社をその國の代表機關として國際報道思想戰に臨んでゐるのである。これが國家代表通信社であり、わが國のそれが卽ち同盟通信社である。|第一次世界大戰の苦き經驗| 思想戰における强力なる國家代表通信社の必要といふことは、第一次世界大戰の苦き經驗が痛切に各國に敎へたところであつた。當時各國は、それぞれ內外のニュースに對して嚴重な統制を行ふと同時に、自國の通信社卽ち英はロイターを、佛はアヴァスを、露はウェストニックを、伊はステファニを、而して獨はウォルフを|同盟本社(市政會館) |
7 | |
同盟の使命と活動
| P.0008 | 1944年 | 【本文】|動員して臨み、全世界にわたつて激烈な思想戰を展開したが、就中英國ロイター通信社の活動は壓倒的なものがあつた。當時は無線電信の發達が未だ幼稚であつて、報道通信は全部有線電信によつてゐたのであるが、世界にゆきわたる海底電信の大部分は英國の手に握られてゐたので、英國の國家代表通信社たるロイターはこれを獨占して全世界に縱橫無盡の宣傳戰を展開することができたからである。平時においても英國はこの海底電線の獨占によつて世界の經濟を支配し、植民地搾取の野望を遂げてゐたのであるが、ひとたび戰爭となるやこの經濟戰の武器をたちまち思想戰のそれに變へ、思ふままに驅使したのである。このため獨逸はその對外宣傳をまつたく封鎖されて國際的孤立に陷り、遂に無念の敗北を喫したのである。戰後獨逸の新聞をして「ドイツを亡ぼしたものはロイターである」と悲痛なる絶叫を發せしめたことは決して誇張ではない。己れを世界に向つて語り得ないものは結局敗北する。思想戰に勝つものこそ世界を支配するものであるといふことを、第一次大戰は冷嚴な現實をもつて示したのであつた。|國家代表通信社| 第一次世界大戰の經驗から各國は一つの結論を得た。卽ち、近代戰は總力戰である。武力戰であると同時に經濟戰であり思想戰である。而して各國民を對象とする思想戰の原動力はニュースである。このニュースを組織化し、これを最も力强く、且つ廣く全世界に普及徹底せしむるためには强力なる國家代表通信社が必要であるといふことであつた。| そこで世界の各國は、內外ニュースの中樞機關として、對內的には中央と地方との間に、對外的 |
8 | |
同盟の使命と活動
| P.0009 | 1944年 | 【本文】|には自國と世界各國との間にニュースの交流を行ふ强力な報道通信組織を確立し、これによつて內に健全なる國民思想を作興するとともに、外に國際的發言權を强化することにつとめた。國家代表通信社はかくのごとき國際情勢の必然から生れたものである。| したがつて國家代表通信社の强弱はただちにその國の對外發言權の强弱を意味し、國力の消長を如實に反映する。故にこの機關は一國一組織を原則とし且つこれを單なる民間企業として放任しておくべきでない。その充實强化こそ實に國家の重要責務なのである。現在世界の各國はいづれもこの自覺と原則とに基いて自國の國家代表通信社を擴充强化してゐる。獨逸のD・N・B、伊のステファニ、ソ聯のタス、佛のO・F・I、英のロイター等がそれである。その組織運營の方法に就てはそれぞれの國情によつて相違はあるが、いづれも對外思想戰に於ける國家的機關にして一國一通信社の原則に基いてゐることは同樣である。ただ米國のみは新聞組合組織のA・P、民間企業形態のU・Pの二大通信社が對立してゐるが、果せるかな今次大東亞戰爭勃發當初、フィリピン攻略戰に際し激甚なる競爭の結果、互ひにその報道を非難攻擊して醜態を天下に曝した。けだし各國はいづれも一國一通信社の原則に基いて對外報道の統制を確立してゐたにもかかはらず、ひとり米國|同盟別館 |
9 | |
同盟の使命と活動
| P.0010 | 1944年 | 【本文】|のみは唯一の例外として自由競爭に放任した形で戰爭に臨んだ結果、遂にその缺陷を暴露し苦杯を自から喫するに至つたのである。|世界に比なき同盟の組織| 同盟通信社の組織は、世界通信界の經驗とわが國新聞界の實情とに鑑み愼重研究の結果、わが國の創意をもつて、日本の國家代表通信社たるに最も適切なる組織として選ばれたものである。卽ち、通信社の國營といひ國家管理といひ組合組織といひ、各國の例を見るにそのいづれにも一長一短があるが、同盟の組織はそのいづれにも偏せず、その長を採り短を捨てたのである。まづ公益法人として全事業が國家公共のために營まるべきことを明らかにし、その構成分子を一般國民に對して直接ニュースの報道を業務とするもの、卽ち全國の新聞社と放送協會とに限定して、それ以外のものは如何なる財力も權力もこれに參加容喙し得ざることとし、以てその不偏獨立性を確保してゐる。| しかもその役員の選任には政府の認可を得ることによつて國家機關としての性格を具備し、加ふるにその運營は社長の統裁に任せ、積極果敢な報道活動をなさしむるやう考慮されてゐるのである。かくて同盟は、朝野一途、官民一體、わが國報道機關の總力を結集して國家の對外思想戰を遂行すべく、世界各國のそれに比して最も完全・强力なる組織を整備してゐるのである。|通信社の世界的連繫と同盟| ひと口に國家代表通信社といつても、地球の上には六十餘ケ國の獨立國があつて、その國情なり國力なりも千差萬別であり、從つてこれを代表する通信社の大小弱强もまた多種多樣であ |
10 | |
同盟の使命と活動
| P.0011 | 1944年 | 【本文】|る。が、とにかく現在一國を對外的に代表する國家代表通信社は約三十、そのうち日本の同盟、獨のD・N・B、伊のステファニ、ソ聯のタス、佛のアヴァス(今次戰後O・F・I)、英のロイター、米のA・P等を主として、これら各國通信社間に直接または間接の通信契約を締結し、ニュースの相互交換、特派員に對する相互援助等を目的として世界的連繫を組織してゐるのである。この組織こそ世界最大最强の通信網であつて、この國家代表通信社の世界的連繫を通じて流れるニュースこそ實に世界思想戰の砲彈なのである。勿論、今次の大戰勃發後は、交戰國間の友好關係は破れ、大東亞戰爭勃發後はわが國もまた敵米英側との關係を斷絶したのであるが、それは單に契約による相互關係のことである。現在の對外報道は各國とも主として無線同報――卽ち無線電信による同時通報――によつて行はれるので、敵國側こそ一層相手方の同報するニュースを受信しその國情を知らうと努めるから、實際はますますこの世界的通信連繫が活潑且つ激甚に活用されてゐるのである。| そこで、對外思想戰は依然この世界的通信連繫を通じて行はれるのであつて、赫々たる皇軍の戰果、大本營の發表も、總理大臣の聲明も、報道部長の談話も、また有力新聞の論評も、銃後一億の固き團結の實相も、電鍵一戞、この世界的通信網に叩きこんでこそ、はじめて世界各國に周知徹底せしめることができるのである。| わが同盟は、この世界的通信連繫の最强の一環として、日夜間斷なく活躍してゐるのであつて、同盟のニュースが恰かも響の聲に應ずるごとく、日々世界の各國に反響を呼び、波紋を描き、敵國をして畏怖せしめつつある所以も亦ここに存するのである。 |
11 | |
同盟の使命と活動
| P.0012 | 1944年 | 【本文】|第二 同盟の生れるまで|通信自主權獲得の苦鬪史| 今日わが國が世界思想戰上に立ち强力に戰ひ得る國家代表通信社を有するに至るまでには、內に通信事業に對する啓蒙・育成と、外に米英殊に英國ロイターを相手とする通信自主權獲得の四半世紀にわたる先覺の努力と苦鬪の歷史とがあるのである。それは嘗ての不平等條約の改正と同じく、苦難にみちた通信治外法權撤廢の戰ひであつた。いまその忍苦の跡を顧ることは大戰下いよいよ熾烈を加ふる思想戰に對する認識に資すること必ずしも少くないであらう。|英國の屬領に等しき屈辱| 元來、世界いづれの國においても通信社の發達は先づ新聞社の發達を前提とする。わが國においても、明治維新後國力の發展に應じて新聞が發達し、それに伴ひ明治二十年代に帝國通信社、同三十年代に日本電報通信社が生れたが、いづれも中央のニュースを地方へ頒布するための國內通信社であつて、未だ外國のニュースを自ら取扱ふには至らなかつた。當時世界の通信界は英國ロイターの制覇するところであつて、彼ははやくも東亞に進出し「ロイテル海外電報」の名においてわが國の海外ニュース市場を獨占してゐたのであつた。| その後わが國の國際的地位が急激に高まり、政治經濟文化等各般にわたつて海外との交渉が密接頻繁となるにしたがひ、海外ニュースへの要求がますます旺んになつたが、たまたま大正の初期、米國に猛烈な排日運動が起るに及び、日本を世界に認識させると同時に、世界の事情 |
12 | |
同盟の使命と活動
| P.0013 | 1944年 | 【本文】|を國內に識らしめるための通信社の必要が痛切に感じられ、大正三年財界有力者を中心として「國際通信社」が設立された。これがわが國最初の對外通信機關であつたが、資本金わづかに十萬圓、しかも日本人中にはこの種對外通信事業の經驗者なきため、その經營を當時米國A・Pの東京通信員であつたラッセル・ケネデーに一任するといふ情ない實情であつた。のみならず、その海外ニュースは依然ロイターに仰ぐほかなく、その通信契約は全くロイターの屬領にもひとしき屈辱的なものであつた。一例をあげるならば、「國際」はロイター以外のいかなる外國通信社とも直接契約することを禁じられ、それら第三國とのニュースの交換は、一切ロイターを通じてでなければ許されないし、またロイターの承認なくしてロイター以外の通信社、新聞社等に對し絶對に日本のニュースを供給してはならぬといふごときである。思想戰における英國の世界制覇が、いかに早くより根强く、且つ周到に用意され、そして日本にも臨んでゐたかはこれをもつてその片鱗を窺ふことができるであらう。|痛憤、ロイターの跳梁| 果せるかな、第一次歐洲大戰勃發するや、世界宣傳は殆どロイターの獨壇場と化し、わが國に日々殺到するニュースは、英國及びその聯合國側の宣傳ばかりで、その大部分を紙屑籠に捨て、愼重に選擇採用したニュースも、あとから見ればなほ英國の宣傳であつたといふ有樣であつた。| このロイターの傲岸なる跳梁に對し、當時の心ある人々は痛憤、ひそかにわが國の將來を憂へたのであるが、いまだわが朝野一般に思想戰 |
13 | |
同盟の使命と活動
| P.0014 | 1944年 | 【本文】|に對する認識なく、從つて通信事業に對する理解も一部の人々に限られてゐた狀態なので、當時のわが實力をもつてしては如何ともする能はず、隱忍時をまつほかなかつたのである。ここに於てか當時の先覺たちの間には、いよいよ激甚なるべき將來の思想戰に對し、强力なる國家代表通信社の必要が痛感せられ、その實現の前提として先づロイターの支配から脫すべく、通信自主權の獲得にむかつて默々の努力がつづけられたのである。|通信不平等條約の打開| 大正十二年「國際」はケネデーに代つて岩永裕吉氏が主宰することとなり、創立十年にしてやうやく外國人の手をはなれて、日本人自身の手によつて運營されるに至つたが、これと同時にロイターとの不平等條約打開に突進し、まづロイターから日本領土における外國ニュースの自主的頒布權を獲得した。これによつて從來の「○○發國際ロイテル」といふ冠頭クレジットは初めて日本の新聞紙上から消えたのである。もちろんなほロイターの支配から脫することはできなかつたが、しかしこれが通信自主權獲得への第一步であつた。| 更に大正十四年には、ロンドンに「國際」の支局が設置されて、ここに常時日本人の手による海外ニュース報道の端が開かれ、日本を外國の宣傳市場とすることから救ふ途も拓かれた。なほ同年には、「國際」はソ聯國營のロスタ通信社(現在のタス)と對等の通信契約を結んだ。これに對しては、ロイターは容易に肯じなかつたのであるが、ロスタをして、その國營通信社たる地位を利用し、日本との直接ニュース交換を强硬に主張せしめ、遂にロイターを屈服させ |
14 | |
同盟の使命と活動
| P.0015 | 1944年 | 【本文】|て、不平等條約の一角を崩すことに成功したのであつた。|着々對等契約獲得| かうして通信自主權の獲得は着々と進んだのであるが、一方、國家代表通信社建設への目途から、大正十五年春、「國際」は對支通信機關としてさきに設立されてゐた「東方通信社」を合併して「新聞聯合社」に發展し、昭和二年聯合はそれまで「帝通」に委讓してあつた海外ニュースの地方頒布權を接收して、ここにわが國は米國のU・P電を獨占する「電通」と、ロイターを通じて世界通信聯盟に加盟する「聯合」との二大通信社對立時代に入つた。| 從來海外通信を主としてきた「聯合」は、昭和二年國內ニュースの蒐集頒布をも開始した。これは單に國內新聞社の要求を充たすためのみでなく、對外思想戰を强力活潑に遂行するためには、「聯合」はどうしても自國のニュースを蒐集する機構を完備しなければならぬといふ必要に基いたものである。| かやうに國家代表通信社の生まるべき素地が着々つくられるとともに通信自主權獲得への努力は不斷につづけられ、昭和五年には「聯合」と獨逸のウォルフ通信社との間に相互通信交換の諒解成り、更に同六年にはポーランドのP・A・T通信社とも通信交換契約が成立した。|遂に通信自主權確立| しかしながら、通信自主權の獲得は、なんといつてもロイターとの不平等條約の撤廢にあつた。なぜなら、ロイターを中心とする世界通信聯盟が世界最大最强の通信網であり、ロイターとの條約を改訂せざる限り、その聯盟に屈する |
15 | |
同盟の使命と活動
| P.0016 | 1944年 | 【本文】|米のA・P、佛のアヴァス等と直接契約することができないからである。| しかし、多年にわたる努力はつひに報いられた。昭和八年秋、岩永「聯合」專務は單身ロンドンのロイター本社に乘り込み、社長ジョーンズとの間に直接交渉を開き、遂にロイターを屈服せしめて對等契約を結ぶことに成功した。岩永氏は歸途米國に於てA・Pとも同樣通信契約を締結、ここに多年の懸案であつた通信自主權は確立され、「聯合」は世界通信聯盟の最高位に列し完全に世界のニュースを蒐集し得るとともに、全世界にむかつて强力な發言權をもつにいたつたのである。|苦鬪四半世紀、同盟の成立| しかしながら國內にはなほ「聯合」「電通」の對立があり、兩社の間に激甚な事業競爭が行はれて、對外思想戰上好ましからざる事態を屢々惹起した。あたかも昭和六年滿洲事變勃發し、ついで國際聯盟の脫退等、わが國の國際關係漸く緊迫するや、二大通信社の對立による對外思想戰の不利は朝野の識者をしていよいよ單一强力なる國家代表通信社の必要を痛感せしめ、遂に政府は「聯合」、「電通」の合併による一大通信社の設立に乘りだし、その間幾多の紆餘曲折はあつたが、昭和十年十一月七日、社團法人同盟通信社|初代同盟通信社社長|岩永裕吉氏 |
16 | |
同盟の使命と活動
| P.0017 | 1944年 | 【本文】|が設立せられ、先づ「聯合」がこれに參加して同十一年一月一日より業務を開始し、同年六月、「電通」も亦その通信業務を擧げてこれに合流し、ここに多年翹望された一國一通信社の態勢成つて、擧國一體、官民一途、全く一つの聲で日本を正しく世界に語ると同時に、世界の動きを日本人みづからの手で一億國民に傳へることができるに至つたのである。これこそ實に隱忍默々四半世紀にわたる苦鬪の成果であつた。|大東亞戰爭を戰ふ同盟| かくて同盟が設立されるやまもなく支那事變が勃發し、つづいて歐洲大戰、更に大東亞戰爭と、わが國は急轉息つぐまもなき重大時局に直面するに至つたのであるが、これに對し完璧强力なる思想戰の陣容をととのへて臨み得たことは眞に國家のために幸ひであつたといはねばならない。| 今や戰局は決戰段階に入つて日每に熾烈となり、敵米英の思想謀略はますます惡辣深刻を極むるとき、わが同盟は敢然としてこれに立ち向ひ、國內はもとより東亞諸地域、全世界にわたつて完備せる强大なる通信機構を擁して瞬時も熄みなき活動をなし、これに從事する同志職員五千名、いづれも世界思想戰上無名の戰士たる矜持と覺悟とをもつて孜々默々と各自の持場に戰つてゐるのである。かかる大陣容をもつて堂堂世界の思想戰に臨み、かつての覇者米英を相手に毅然として戰ひつつある姿を見る時、四半世紀にわたる幾多先覺の隱れたる努力と、その通信自主權獲得の苦鬪史は新しき光を放つて力强くわれらを勵ますのである。 |
17 | |
同盟の使命と活動
| P.0018 | 1944年 | 【本文】|第三 同盟の報道組織| 同盟は、東京の本社(總員一千四百名)を中心として、國內に大阪、名古屋、福岡、札幌、京城、臺北の七支社及び全國樞要地六十二支局(總員千五百名)のほか、各地に二百六十名の通信員を配置し、さらに全國各地方有力新聞社と同盟支局との間には表裏一體の密接な關係を確立して强大な通信網を完備し、東亞地域に於ては、滿洲國では新京に支社、奉天、哈爾濱、大連に支局を置いてゐるが、同國の國家代表通信社である滿洲國通信社(略稱國通)は、組織人事ともに同盟と二位一體の立場にあり、血肉相通ふその組織はそのまま滿洲國における同盟の組織であるといつて差支へない。| 支那に於ては、中華總社(南京)の下に華北(北京)、華中(上海)、華南(廣東)の三總局を置き、その下に北支(蒙疆を含む)十二、中支七、南支四の支局を配し(總員一千名)、更に北京の中華通訊社、南京の中央電訊社の如き支那側有力報道機關また同盟と表裏一體關係にあり、また南方諸地域には、南方總社(昭南)の下に昭南、サイゴン、マニラ、ジャカルタ、ラングーン、マカッサルの六支社、各樞要地二十三支局を配し(總員七百名)、東亞建設の現地鼓動を傳へてゐるが、この他大陸及び太平洋戰域を通じて常に數十の從軍報道班が第一線に出動して皇軍將兵と生死をともにしつつ刻々の戰況報道の任に邁進してゐるのである。| 海外に於ては、戰前は各國國家代表通信社と共に世界通信聯盟を結成し、これと提携するほか、世界各國に二十五支局を設け、樞要各地に數十名の特派員を置いてゐたが、戰爭によつて |
18 | |
同盟の使命と活動
| P.0019 | 1944年 | 【本文】|敵國側との關係は斷絶し、敵國所在の支局は閉鎖した。しかし盟邦・中立國各通信社とは一層緊密な關係にあるほか、なほ九支局、二十七特派員が日本の對敵情報挺身隊として活躍してゐる。| 以上が同盟の取材機構であつてこれに從事する總員五千名、その廣さと大きさは文字通り世界的規模であるが、同盟の大使命からいへばニュースの取材活動はいまだ任務の前半であつて全部ではない。これら同盟の觸手は單に各地のニュースを中央に送るだけではない。中央のニュース及びこれら各地から集つたニュースを中央から更に受けて、各地の新聞社、放送局その他に供給頒布するのが重要な任務である。| このため同盟の通信施設、就中有線無線による電氣通信施設は、單なる報道情報機關や一般新聞社のそれとは比較にならぬほど複雜大規模なものとなるのである。蜿蜒七千粁、日本の通信大動脈を形成する專用長距離電話線、一日五萬字、全國を瞬時に結ぶ國內無線同報、囘線百十七に及ぶ東京、各地の市內專用電話線、通話數一年二十萬囘に達する豫約電話、對外的には一日六萬語、晝夜間斷なく世界を電波に蔽ふ對外電信同報、東亞各地を結ぶ無線電信網等、同盟の內外電氣通信網は恰も日本を中樞として世界に張りめぐらされたニュース神經そのものである。| 政府は、各國代表通信社の例に傚ひ、同盟の國家的使命に鑑み、これら內外電氣通信施設の利用には特殊の利便を與へ、且つ通信の迅速を期し連絡の便をはかるために同盟本社內に大規模の中央電信局分室を、また各總支社局にも地方電信局分室を設置して同盟と一體的活動をなさしめてゐるのである。 |
19 | |
同盟の使命と活動
| P.0020 | 1944年 | 【本文】|第四 同盟の國內活動|廣汎複雜な取材活動| 同盟の活動は頗る廣汎且つ複雜であるが、これを機能的に見ればニュースの蒐集とその頒布とに、地域的に大別すれば對內活動と對外活動とに分ち得る。これらはいづれも相關聯してゐるのであるが、その活動はニュースの蒐集にはじまる。| 各地の總社、支社、總局、支局、通信部、特派員等、國內は勿論、全世界にゆきわたつてゐる同盟の銳敏な觸手に感受されたニュースは、或は有線或は無線、或は電信或は電話或は飛行機、時には可憐な傳書鳩で、分秒を爭ひ東京本社に送信される。勿論特殊な地方的ニュースはその土地の支社局で處理頒布されるが、そのほかの一般的ニュースも迅速を旨とするために、本社への送信途次中繼支局で傍受され、その地で適宜整理編輯されて頒布されるものも多い。| 東京本社には、總務、編輯、海外、經濟、聯絡の五局があつてそれぞれの業務を總括してゐるが、そのうちニュースの蒐集活動に當る基幹組織は編輯局である。編輯局には政經、社會、地方、東亞、外信、寫眞、文化、整理の各部があつて活動を分擔し、戰時下、大本營陸海軍報道部は勿論、首相官邸、各省官廳、產業經濟機關、社會・文化團體等にそれぞれ專門の記者を常置し、更に日々發生する事件に應じて機動的に記者を派する等間然するところなき取材組織を擁し、高度の報道機能を發揮してゐるが、同盟は思想戰の中樞機關たる任務からこれらの一般取材活動のほか、その送信對象によつて、卽ち全國各地方新聞社へのそれぞれの記事資料を |
20 | |
同盟の使命と活動
| P.0021 | 1944年 | 【本文】|はじめ、對外的には、東亞共榮圈の各地域向け、盟邦或は中立國向け、さてはまた敵米英に對するもの等の特殊ニュースの蒐集にも常に細心周到な注意を拂はねばならぬので、その活動は更に多角的となるのである。| また日夜をわかたず刻々入電する東亞各地よりのニュース、前線報道班員からの戰況等は東亞部で、世界各國よりのニュースは外信部で處理されるが、緊張と昂奮で戰場のやうな編輯室で締切り時間に急きたてられながら讀みにくい片假名や符牒のやうな單語を羅列した電報を飜譯して解り易い文章に書き直すのは容易なことではない。殊に外國からのニュースに對しては敵性の謀略宣傳乃至デマ臭いものがないかどうかを常に注意し嚴重に檢討してこれをはね除けねばならない。同盟の取材活動は內外にわたつて複雜多岐であるが、しかもこれらの活動は思想戰の本來的使命といふ立場から有機的綜合的に指導され統一されて、すこしも齟齬錯雜するところがないのである。|ニュースの整理と編輯| かうして內外の第一線から編輯局に集められたニュースは、それぞれ當該部において嚴密な檢討を經た上で整理部に廻される。整理部は編輯局の連絡中樞であつて、各部からのニュース|午前七時――はや外信部では電報の飜譯に懸命である・海外局には霰のやうなタイプの音 |
21 | |
同盟の使命と活動
| P.0022 | 1944年 | 【本文】|を更に統一的に檢討し、常に檢閲當局と連絡して嚴重な校閲を加へニュースの前後輕重、その日のニュースの分量、送信狀況等を考慮して適宜に取捨調整する。かくて整理編輯されたニュースはいよいよ思想戰の砲彈としてそれぞれに仕分けされ、國內へのものは聯絡局へ對外戰のものは海外局へ送られる。| 思想戰の原動力たるニュースの蒐集は正確であると同時に迅速でなければならぬ。「時」はニュースの生命である。このために同盟の通信施設は不斷に改善に改善が加へられてゐるが、近來いよいよ充實整備し、第一線部隊の機敏な活躍と相俟つてその速さは全く電光石火的である。たとへば、香港陷落の第一報のごときは實に一分を要しなかつたのであるが、大陸南方の重大ニュースが僅々數分で本社に入電するごときは殆ど日常的であり、海外からも、かつてヒットラー總統の演說がまだ續いてゐる最中に、東京では早くも同盟電がラジオで放送されてゐるといふやうな例は決して珍らしいことではない。大戰で種々の障碍があるにもかかはらず、昭和十八年七月二十五日の伊太利の政變は發表後二十分、九月八日のバドリオの裏切りは僅か五分後に東京本社に入電してゐるのである。これは勿論、同盟のもつ世界的通信組織の偉力で|編輯局では夜中ま息つくひまもない |
22 | |
同盟の使命と活動
| P.0023 | 1944年 | 【本文】|あるが、その機能を十分に發揮させるものは科學的電氣通信施設である。| 各地からのニュースが本社へ送信される狀況を系統的に見ると次のやうになる。|△東京――市內專用電話線、又は一般電話線|△內地――主として長距離專用電話線により東京へ送話、又は一般電話電報により直接|△外地――朝鮮は專用電話線により、臺灣は無線電話又は一般電報|△滿洲――日滿專用電話及び無線により東京へ直通、一般電報も併用|△支那――各總社局・支局の同盟無電、一般電報|△南方――同上|△海外――內外有線・無線電報、時に國際電話|同盟ニュースの頒布| 編輯局で整理編輯されたニュースは、すべてタイプライターで打つて印刷され、市內は十數分置きに配達されるが、編輯からタイプ或は印刷にして發送するまでの時間は槪ね二三十分にすぎぬ。機關銃を亂射するやうな女子タイプ部員の活躍、各種の通信を敏速に處理する發送部の奮鬪はまさに戰場のやうである。| しかし、寸刻を爭ふニュースの大部分は、同時に電話電信等の電氣通信施設で送信される。その方法を大別すれば、市內同報電話、長距離專用電話、國內無線同報であつて、この他に補助的に豫約電話が使用され、また特殊のものに船舶無線同報がある。|市內同報電話| 一ケ所から送信されるニュースを、同時に數ケ所で受信する方法をすべて「同報」といふ。市內各新聞社及び放送局に對してはこの方法で刻々にニュースを同報してゐる。殊に朝刊の締切間際 |
23 | |
同盟の使命と活動
| P.0024 | 1944年 | 【本文】|におけるその活動は物凄い。ラジオで報道放送中に「只今戰況がはいりました」といふのは同盟からこの同報電話で放送局に入つたばかりのニュースなのである。| かういふ同報電話の施設は地方重要都市の支社局にも設備してある。|長距離專用電話| 東京の本社を中心に、北は北海道から本州を縱貫して南は四國九州に及び、更に遠く朝鮮滿洲に達する蜿蜒七千粁の直通電話線、これこそわが國の通信大動脈なのである。これは一本の線につながる同報式であつて、東京本社から一人の送話係によつて送られるニュースを、その線に接續する各支社局が同時に一齊に受信するのであるが、普通の人にはききとれぬくらゐ早い速度で讀む原稿が、一字の誤りもなく各支局|迅速そして正確――|整理・編輯されたニユースはすぐさまタイプされ新聞社や官廳に發送される |
24 | |
同盟の使命と活動
| P.0025 | 1944年 | 【本文】|の速記係によつて書きとられる呼吸、それが直ちに原稿となつてその土地の新聞社、放送局等に速報される神技は、眞に驚嘆すべきものがある。したがつてこの直通專用電話線の偉力たるや、ほとんど距離と時間とを零にも等しくするもので、たとへば組閣の大命降下のニュースのごときは實に五秒にして全國各新聞社に報道されるのが例であり、戰況その他重大ニュースは常に一分をいでない短時間に內地、朝鮮、滿洲に速報され、議會での演說も、夕刊締切直前五分乃至三分までも揭載できるのである。| この專用電話線は、また随時寫眞電送に利用されて同樣の機能を發揮してゐる。その徑路は左のごとくである。|1 東京――橫濱――名古屋――京都――大阪――神戶――岡山――廣島――下關――門司――福岡間(二囘線)|2 東京――仙臺――靑森――函館――札幌間|3 福岡――釜山――京城――奉天――新京間(別に、新京――奉天――大連間及び新京――哈爾濱間專用線あり)|4 福岡――熊本――鹿兒島間|5 福岡――長崎間|6 大阪――福井――金澤間|7 京都――大阪――神戶間|8 東京――長野間|9 岡山――高知間|合計一〇囘線。六、六八四粁|國內無線同報| 長距離專用電話線が時間的經過的であるに對して、これは空間的普遍的送信方法であつて、有線と無線と科學的通信施設の雙璧、兩々相俟つてその萬全を期してゐるのである。これは同盟本社內の無電室から短波無線電信によつて同報 |
25 | |
同盟の使命と活動
| P.0026 | 1944年 | 【本文】|されるニュースを、國內及び滿洲各地にある同盟支社局で同時一齊に受信し、直ちにその土地の新聞社に供給するものであつて、この無線同報は特に政府から同盟に與へられた特權である。國力の發展にともなひ、ニュースの量は日に月に激增するばかりであるが、その送信は無線同報の機能を最高度に發揮することによつて解決される。同盟は夙にこれに着眼し研究をとげた結果、昭和十四年來實施するにいたつたもので、現在六十餘ケ所に受信局を設け、每日五萬字內外のニュースを送つてゐるが、晝夜間斷なく全國隅々にまでひろがりゆく電波は、どんな僻遠の地でも瞬時に受信され、各地で同時に頒布されるのであるから、日常でも非常な偉力を發揮してゐるのであるが、萬一の非常災害殊に戰時下空襲等の場合の通信對策としても極めて重要な施設である。| 國內無線同報受信支社局は現在左の各地であるが、國內での利用はもとより最近滿洲國では基本的ニュースはこれに依り、支那大陸でも漸次利用しつつある。|豐原、旭川、釧路、札幌、函館、靑森、秋田、盛岡、仙臺、福島、山形、宇都宮、前橋、水戶、浦和、千葉、新潟、長野、甲府、橫濱、靜岡、富山、金澤、福井、名古屋、岐阜、津、京都、大津、奈良、大阪、神戶、岡山、廣島、松江、鳥取、高松、德島、松山、高知、山口、下關、門司、小倉、福岡、大分、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿兒島、那覇、釜山、京城、淸津、咸興、平壤、新義州、臺北、臺中、臺南、花蓮港、高雄、パラオ、新京、奉天、大連、哈爾濱|豫約電話| 豫約電話は每日一定時刻に、同盟本社と支社局又は新聞社間に通話する送信方法である。こ |
26 | |
同盟の使命と活動
| P.0027 | 1944年 | 【本文】|同盟國內通信網|千葉|川崎|靜岡|横浜|同盟本社|水戶|浦和|前橋|宇都宮|甲府|長野|新潟|仙台|福島|山形|盛岡|青森|秋田|函館|釧路|札幌|旭川|小樽|豊原|名古屋|津|岐阜|大津|京都|大阪|奈良|和歌山|德島|富山|金沢|福井|神戶|舞鶴|鳥取|高松|高知|岡山|松江|廣島|松山|下関|山口|大分|門司|小倉|福岡|宮崎|鹿兒島|熊本|佐賀|長崎|釜山|清津|咸興|京城|ハルビン|新京|奉天|大連|新義州|平壤|那覇|パラオ|花蓮港|高雄|台南|台北|台中|同盟本社|支社|支局|市外專用電話線|專用寫眞電信線|豫約電話線|同報無線受信地 |
27 | |
同盟の使命と活動
| P.0028 | 1944年 | 【本文】|れは全く局部的補助的手段であるが、それでもなほ六十二區間、一日の通話量は五百八十四通話、延時間二十九時間餘に達する。|船舶無線同報| 國內無線同報とは別に、海上を航行中の日本船舶に對し、同盟本社から每日四囘定時に無線同報をもつて簡勁なニュース(和文、五千五百字)を送つてゐる。戰時下決死の輸送戰を遂行してゐる帝國船舶は、この無線同報で祖國をはじめ世界の情勢を知り、船內で新聞を發行してゐるのであるが、それによつて乘船中の皇軍將兵や船客乘組員たちがどんなに慰められ力づけられてゐるか知れないのである。|同盟の特別通信| 思想戰の根幹はニュースであるが、堅實なる國民思想はまた豐かな文化的敎養に培はれねばならない。新聞やラジオが一般ニュースのほかに各方面の文化的記事を揭載したり、放送したりするのはこの故であつて、同盟はこのために「特別通信」を發行して全國新聞社の要求を滿たしてゐる。| この「特信」は內外の政治、經濟、軍事をはじめ、科學、文學、美術、敎育、生活特に婦人子供を中心とする生活科學、或は有力評論家の評論、著名作家の小說等その範圍は極めて廣汎にわたつてゐるが、常に時局の動向と關聯し、ニュースの報道と相俟つて健全なる國民思想の啓發向上に努めてゐるのである。|同盟と新聞社| 思想戰の最大武器はいふまでもなく新聞である。現在東京、大阪をはじめ全國各地の新聞社 |
28 | |
同盟の使命と活動
| P.0029 | 1944年 | 【本文】|は約七十社を數ふるが、その悉くが同盟に加盟し同盟はこれにニュースを供給してゐる。このほかに滿洲、支那、南方各地で發行される邦字、漢字、現地語、英字新聞で同盟のニュースを受けてゐるものは百社以上に及び、これらの總發行部數は約二千萬に達する。卽ち同盟のニュースは東亞の新聞を通じてだけでも、每日少くとも二千萬の人々に呼びかけてゐるわけである。| 同盟の活動は新聞社のそれに比していちじるしく內面的であり基本的である。直接大衆に呼びかけるのではなく、新聞およびラジオを通じてその機能を發揮するのであるから、一般外部には華々しく映らないのが當然であり、それが持ち前なのである。しかしながら、現在の世界大戰の狀況は勿論、內外の政治、經濟、社會、文化等萬般のニュースは洩れなく同盟から新聞社に供給されてゐるのであつて、その分量は統計によると、每日一流新聞の收容量の約二倍以上に達してゐる。これらのニュースは、海外からのものは「○○發同盟」といふ冠頭クレジットを附して新聞紙上に現はれるが、その他のものは、或はそのまま、或は再編輯されて揭載される。最近は新聞紙面がだんだん狹くなつたのに反し、同盟からの供給ニュースはますます增大するので、紙上に收容し切れないニュースが多いのであるが、それらの|國內報道網の神經中樞――通信部 |
29 | |
同盟の使命と活動
| P.0030 | 1944年 | 【本文】|ニュースには詳報、解說、批判、觀測等が多く、それらこそ實は新聞編輯上の參考として、隱れてはゐるが非常に重要な役目を果してゐるのである。なほ序ながら、一般ニュースは勿論、同盟の世界的通信網によつて蒐められた情報資料はすべて參考として政府當局に提供せられてゐるのであつて、その戰爭遂行上國策に資することの大なるは贅言するまでもない。かやうに戰時下思想戰の遂行に關し、政府の指導主體と同盟と各新聞社との間の不斷の連絡と協力こそは擧國一體、總力結集の原動力である。|同盟と放送局| 思想戰の新銳武器はラジオである。同盟と放送局とはそれぞれ活動の形態を異にしてはゐるが、思想戰における國家的使命においては異るところがない。この兩者が相俟つて間然するところなくその機能を發揮するとき、思想戰はいよいよ强力に遂行されるのである。この建前から同盟と放送局とは組織、業務ともに密接不離の關係に置かれてゐる。卽ち日本放送協會は新聞社以外唯一の構成社員として同盟組織に參加し、中央放送局は勿論、全國の放送局から每日放送されてゐる內外のニュース、經濟及び地域的ニュースは同盟から供給されるのである。かやうに同盟はラジオを通じてもまた日每に一億の同胞に呼びかけてゐるのである。|大本營發表の瞬間 |
30 | |
同盟の使命と活動
| P.0031 | 1944年 | 【本文】|第五 同盟の對外活動|世界に呼びかける同盟| 國家代表通信社としての同盟の重大なる使命は報道の對外活動である。卽ち日本を正しく且つ强力に世界に語ることである。今や世界大動亂に際して、各國は火花をちらす思想戰に死物狂ひとなつてゐるのであるが、就中敵米英の謀略宣傳の惡辣老獪なることは第一次大戰以來札附きとして知られたところ、今次の大戰に於てもバドリオの裏切りによる伊太利の屈服はその毒牙の恐るべきことを最も深刻に、現實に示したものであつた。かかる敵の謀略から祖國を防衞し、進んでこれを粉碎するためには、日本の意志と實力とを世界に正しく强く語り、徹底的にこれを認識せしめねばならぬ。同盟はこの使命遂行のために敵米英を向ふにまはして敢然と戰つてゐるのである。この對外報道戰の主力が卽ち對外無線同報であり、駐日外國特派員に對する指導と援助も亦その一任務である。|對外無線同報| 對外無線同報とは、强力なる短波無線電信をもつて全世界或は特定の地域に向けてニュースを發信し、廣く各國において受信せしむるものであつて、電信放送ともいはれる。それはモールス符號によるものであつて、聲で放送するラジオとは區別されるものである。世界の各國はいづれもその國家代表通信社をしてこれに當らしめ、各國通信社は自國のニュースを世界に向け放送するとともに、各國の放送するニュースを受信して、自國內に供給頒布してゐるのである。第一次大戰當時は有線の海底電信によつて |
31 | |
同盟の使命と活動
| P.0032 | 1944年 | 【本文】|ゐたため、全世界が英國ロイターの跳梁に蹂躙されたことは前に述べたが、現在の報道思想戰は無線電信の發達によつてその樣相が全く一變したのである。卽ちいま戰はれつつある思想戰の主體はこのひろがりあひ、亂れ飛ぶ電波なのであつて、直接世界に呼びかけるこの對外無線同報こそ同盟の國家的使命遂行の强力なる手段であり、その故にその發受信も亦同盟にのみ許されてゐるのである。いふまでもなく各國の發する電波は、技術的には適當な受信器さへあれば何處ででもまた誰にでも受信できるわけであるが、かくては國內は世界宣傳の攪亂場となつてしまふ。そこで政府は國法をもつて一般の短波發受信を嚴禁し、同盟にのみこれを許して敵の思想攪亂を防いでゐるのである。同盟はこれによつて殺到する世界ニュースの中から敵性宣傳謀略は嚴密に檢出して、嚴正なるニュースを國內に提供してゐることはすでに述べたとほりである。|方向每にニュースの砲彈| 同盟の對外報道を直接擔當するのは海外局である。海外局には企畫、大陸、華文、歐米、情報の各部があつて更に分擔してゐるが、企畫部は社內他局部、官廳等と連絡をとつて對外報道全般の計畫を樹て、大陸部は東亞大陸各地向けの邦文ローマ字綴りを、華文部は滿蒙華南方各地華文新聞用の華文原稿を、また歐米部は英、佛、西の三國語を使ひ分けて全世界に對する歐文原稿を編輯し、情報部はもつぱら敵情調査その他作戰資料の蒐集にあたる等、それぞれの方面に對し活動してゐるのである。| 編輯局から送られたニュースは海外局各部においてそれぞれの仕向け先によつて適切に取捨選擇 |
32 | |
同盟の使命と活動
| P.0033 | 1944年 | 【本文】|同盟對外報道戰要圖|對歐|米|A.P.|新聞社|米政府|U.P.|放送局|中米諸國|南米諸國|ブエノスアイレス|米洲向|東亞向|歐洲向|同盟|フィリピン|濠洲|中華民國|佛印|南方諸域|タイ|昭南|満洲國|重慶|ビルマ|インド|モスクワ|ソ聯|タス|獨逸|D.N.B.|近東諸國|イスタンプール|歐洲諸國|伊|ステファニ|佛|O.F.I.|對米|ストックホルム|英|ロイター|アフリカ|ヴィシー|新聞社|英政府|放送局|リスボン|同盟對外無線同報|各國無線同報|同盟支局の通信 |
33 | |
同盟の使命と活動
| P.0034 | 1944年 | 【本文】|され再編輯されて思想戰の砲彈としての仕上げがなされるのであるが、刻々變轉する世界情勢、殊に敵側の情勢に卽應して適時積極的にこれを粉碎すべく編輯局と連絡して特殊の報道資料を編輯し强烈なる直擊彈を發射するなど縱橫自在の活躍をしてゐるのである。| かくて各國語で綴られた電文原稿は、聯絡局の電務部を通じて、同盟本社內にある中央電信局分室に渡されるや、電鍵一戞、遞信省の大無電臺を操縱し、たちまち日本思想戰の電波となつて全世界に飛ぶのである。現在の對外無線同報の狀況は左のごとくである。|方向 用語 一日の同報量 延時間| 囘數 語數| 語 時間|大東亞向 ローマ字 三七 一一、一〇〇 一九・〇〇| 邦文| 華文 一三 一三、〇〇〇 一三・〇〇| 英語 一二 七、六〇〇 一三・〇〇|歐洲向 英語 一〇 五、七〇〇 一〇・〇〇| 佛語 四 一、九〇〇 三・〇〇| ローマ字 二 一、三〇〇 三・〇〇| 邦文|米洲向 英語 一〇 五、七〇〇 一〇・〇〇| 西班牙語 四 二、〇〇〇 四・〇〇|合計 九二 四八、三〇〇 七五・〇〇| これは一日の最低標準量であるが、重要ニュースのある時には、六萬語を突破することがある。現在强力な無電臺六臺を使用してゐるが、近く更に二臺を增設して常時六七萬語にまで增大される豫定である。|敵國側も競つて受信| この無線同報は槪ね二個の異つた周波數を組合せて同時に發信するから、全世界のいかなる所でも受信が可能である。いま方向每にその受信狀況を見ると次のやうである。 |
34 | |
同盟の使命と活動
| P.0035 | 1944年 | 【本文】|(イ)東亞向同報 滿洲、支那大陸、南方各地をはじめ東亞全域に於て受信してゐる。卽ち約百ケ所に上る大陸、南方の同盟總支社局をはじめ、滿洲國、中華民國、タイ國、佛印、ビルマ、ソ聯等の盟邦及び中立國は勿論、濠洲、印度、重慶等の敵性諸國でも異常な注意をもつて細大洩らさず受信してゐる。|(ロ)歐洲向同報 歐洲、西亞、アフリカの全域にわたり大小無數の諸國が受信してゐる。卽ち、D・N・B(獨)、タス(ソ聯)、O・F・I(佛)、はもとより敵側ではロイター(英)が最大の關心をもつて悉く受信し、それぞれ自國の通信網、放送局を通じて更にこれを傳播してゐるのである。その他スペイン、ポルトガル、スイス、スエーデン、フィンランド、トルコ等々の諸國もみな直接に受信してゐる。|(ハ)米洲向同報 北米、中米、南米の全部で受信してゐる。卽ち北米ではA・P、U・P兩通信社をはじめ、桑港、紐育、ワシントン(米)、バンクーバー、オッタワ(カナダ)の各新聞社、通信社、放送局は勿論、政府情報機關では獨り米洲向のみならず、歐洲向、東亞向のものまでも一切受信してゐるのである。中南米各地に於てもまた同樣である。| 卽ち、同盟の對外無線同報は、ひとり日本のみならず、東亞の情勢を世界に報する唯一の機關であり、世界各國、殊に東亞諸地域から驅逐された敵側に於てはこれなくしては日本及び東亞の情勢を知る由がないので競つてこれが受信に努めてゐるのである。現在敵米英では每日同盟のニュースが、新聞紙上に一齊に揭載されたりラジオで放送されたりしてゐるのであるが、それは悉くこの無線同報によるものであつて、 |
35 | |
同盟の使命と活動
| P.0036 | 1944年 | 【本文】|これによつてわが國の意志と實力とは敵國側國民の間にも强く浸透してゐるのである。これをもつて見て、われわれは通信の世界的連繫をもつ國家代表通信社の思想戰における使命のいかに大なるかを今更に認識せざるを得ない。|外國特派員の指導と援助| 同盟の本社內には世界各國の代表通信社の特派員が事務所をもち、同盟からニュースの供給を受け、各々本國に打電してゐるが、これら外國特派員に對する指導と援助もまた同盟の對外活動の重要な任務である。勿論開戰と同時に敵米英特派員は一掃されて、現在は盟邦及び中立國の特派員だけであるが、これら特派員に對しては國內及び東亞のニュースが英文に飜譯されて配布される。同時にこの英文ニュースは印刷に附され、廣く外國公館、外字新聞、在留外國新聞特派員、外國商館等に「英文通信」として一日數囘供給するほか、日本の政治、外交、經濟、文化等を解說し、國內輿論を紹介する「英文特別通信」を發行するなど、積極的に指導して日本を正しく理解せしむることに努力してゐるのである。|通信機器は報道戰の科學兵器である|同盟の技術研究所では日夜これが研究改良を怠らない |
36 | |
同盟の使命と活動
| P.0037 | 1944年 | 【本文】|第六 大東亞に活躍する同盟|東亞報道通信圈の主導力| 支那事變及び引つづく大東亞戰爭における報道活動こそは、同盟がその使命に鑑みて全能力を傾けつくしたものであつて、戰況の報道に努めつつ同時に東亞全域にわたる通信網を確立したことは、實に思想戰に於ける戰ひであり建設なのであつた。| 皇軍の征くところ、陸に、海に、空に、必ず同盟の前線報道班が從軍し、その勇戰奮鬪と赫赫たる戰果を銃後に傳へ、全世界に報じて國民の志氣を昂揚し、亂れとぶ敵のデマ宣傳を粉碎し來つたのである。しかも同盟は、現地のニュースを中央に送るだけでなく、常に中央のニュースを受けてその土地に頒布するといふ任務をも同時に果してゐるのであつて、このことは東亞各地の總支社局は勿論、戰線に進出してゐる從軍報道班まで一貫してゐるのである。| 同盟は作戰が一段落したからといつて戰線を引揚げるわけにはゆかない。前線班は直ちに野戰支局を設置し、これを基礎に逐次通信網を擴充强化して建設工作に協力してゆくのである。かくて支那事變の遂行とともに北支、中支、南支一帶の通信網は擴充整備せられ、更に大東亞戰爭によつて敵米英が一擧に南方諸地域より驅逐せられるや、佛印、タイ、ビルマ、マライはもとよりスマトラ、ジャワ、ボルネオ、フィリピン、南太平洋に散在する諸島にいたるまで支局が設置せられて、その通信網は果然全東亞にわたる廣大なものとなつた。この强大なる通信網を通じて、同盟は今や東亞報道通信網の主導力として戰爭の遂行と同時に大東亞の建設を强力 |
37 | |
同盟の使命と活動
| P.0038 | 1944年 | 【本文】|同盟東亞通信網|東京|マニラ|レガスビー|セブ|ラバウル|ダバオ|マカッサル|メナド|パリックパパン|ポンチャナック|アンボン|クーパン|シンガラジヤ|パンジェルマシン|新京|靑島|天津|大連|濟南|北京|張家口|包頭|厚和|大同|太原|開封|保定|石門|上海|蚌埠|海州|徐州|台北|杭州|蘇州|南京|漢口|九江|廣東|厦門|汕頭|香港|海口|ハノイ|西貢|盤谷|メイミョー|ラングーン|昭南|クチン|ジャカルタ|スラバヤ|スマラン|バンドン|パレンバン|パダン|ブキチンギ|クァラルンプール|ピナン|コタラジヤ|メダン |
38 | |
同盟の使命と活動
| P.0039 | 1944年 | 【本文】|に推進しつつあるのである。|東亞を結ぶ大通信綱| 東亞の廣汎なる地域をつなぐ通信網は、內鮮滿を貫く專用長距離電話線のほかは、同盟の無線電信網によつて完璧を期せられてゐる。卽ち新京支社、中華(南京)、南方(昭南)の兩總社及び華北(北京)、華中(上海)、華南(廣東)の三總局をはじめ東亞各地域到るところにある同盟支局には無線施設があつて、日夜をわかたずニュースの蒐集と、頒布を行つてゐるのであるが、これら各支局のニュースは、下に示すごとく、それぞれの地域の中心地に集められ、そこから强力な無線發信機により同報される。この同報は東京本社はもとより各總支社局に於て受信せられ、ここに東亞諸地域相互間にニュースの交流が行はれるのである。各總支社局は、東京より放送される東亞向同報のニュースとともに、現地ニュースの邦文、華文、英文による通信を刻々發行し、南方では更にマライ語、タイ語等現地語による通信をも發行してゐる。| 東亞各地域のおもなる同報網は左の如くである。|地域 無線同報の中心地 管內支局|(イ)滿洲國 新京 大連、奉天、ハルビン、牡丹江、チチハル、孫吳、ハイラル、吉林、承德、錦州、延吉、通化、佳木斯、安東、北安、王爺廟、東寧、東安、四平、黑河、鞍山、鷄寧|(ロ)蒙疆 張家口 厚和、大同、包頭|(ハ)北支 北京 天津、濟南、靑島、石門、保定、開封、太原|(ニ)中支 上海 九江、漢口、蘇州、杭州、蚌埠、海州、徐州 |
39 | |
同盟の使命と活動
| P.0040 | 1944年 | 【本文】|(ホ)南支 廣東 厦門、汕頭、海口、香港|(ヘ)南方 昭南 彼南、クワラ・ルンプール、メダン、パダン、パレンバン、ブキチンギ、クチン| マニラ ダバオ、レガスビー、セブ、ラバウル| 西貢 ハノイ| バンコック ――| ジャカルタ スラバヤ、バンドン、スマラン| マカッサル パンジェルマシン、パリックパパン、シンガラジャ、ポンチャナック、メナド、タラカン、アンボン| ラングーン メイミョウ|南方の對外報道戰| 大東亞戰爭によつて解放された南方諸地域の通信網こそは、東亞共榮圈の重要地域であり、且つ戰局の中心である地位に鑑みて特に重要であることはいふまでもない。この見地から同盟の南方通信網が、いかに努力され整備されてゐるかは、前揭の表が端的に物語つてゐるが、戰局の進展、建設の進行とともに、その通信組織は急速に擴充强化されつつあるのである。| ことにその中心地昭南には總社を置いて各地支社局を總轄し、軍當局と密接に連絡して戰爭と建設に協力してゐるが、更に現地から全世界に向つて直接東亞諸民族の眞實なる叫びを聽かすべく對外無線同報を實施し、現地の狀況に卽し東京の世界同報と呼應して對外思想戰の重要任務を果敢に遂行してゐるのである。|報道の戰士――前線班| 戰線における皇軍將兵の勇戰奮鬪とその赫々 |
40 | |
同盟の使命と活動
| P.0041 | 1944年 | 【本文】|たる戰果の報道は、前線從軍報道班の筆紙につくし難い勞苦によつて果されてゐるのであるが廣大なる大東亞戰線のいたるところに活躍してゐる同盟の前線報道班は、ただちに戰線の狀況を故國に傳へるのみでなく、その繁忙な發信の間を偷み、東京その他から放送されるニュースを受信して戰線の將兵に故國の消息を傳へるのである。部隊が駐屯すれば直ちに野戰支局を設置しガリ版の野戰新聞を發行して皇軍に頒つ。これがどんなに將兵たちを慰めその志氣を鼓舞するか知れない。かうして硝煙の間、よく前線と銃後とを結ぶ役目を果してゐるのである。| この前線班は、槪ね記者、寫眞班、無電技師各一名、連絡員數名をもつて編成せられ、同盟技術研究所で苦心製作した精巧堅牢な携帶用無電機を携行し、皇軍とともに第一線に進出してその戰況を後方の基地へ送信するのであるが、|前線と銃後とを結ぶ報道戰の尖兵――前線報道班 |
41 | |
同盟の使命と活動
| P.0042 | 1944年 | 【本文】|重いリュックサックのほかにかうした銳敏な無電機、補充用の乾電池などをもつて野宿をし、泥濘をこえ彈雨をくぐるその勞苦はただ報道報國の燃ゆる一念によつて克服されるのである。| 支那事變以來同盟の派遣した從軍報道班員は旣に千名を突破し、現に北に南に大陸に海洋に數十の前線報道班が活躍し、このほかに陸海軍の報道班として從軍してゐるものもある。この前線班こそ文字どほり筆劍一如の報道戰士といふべく、その死生を全く皇軍將兵とともにしてゐるのであつて、同盟だけでもすでに六名の戰死者を出してゐるのである。|滿洲國通信社| 東亞通信網を述べるにあたつては、特に滿洲國通信社のことを語らねばならぬ。滿洲國通信社(略稱國通)は滿洲國の國家代表通信社であつて、同國唯一の通信社として國內に周密な通信網を整備してゐるのであるが、同盟とはその組織を同じくし相互に人事の交流を行ふ等、全く血肉的關係にあり、その報道活動は緊密に提携して行はれてゐる。したがつて國通の通信網はそのまま滿洲における同盟の通信網なのであつて、滿洲國のニュースは滿ソ、滿蒙の國境より、また長城方面より、その專用無電網を通じて刻々に新京に集中され、さらに新京―東京間の專用電話線で一瞬にして同盟本社に傳へられるのである。このほか國通は每日四囘對同盟無線同報を行つてゐるが、かうして滿洲國關係のニュースは洩れなく同盟本社に入るのである。| なほ同盟からのニュースが、直通專用電話線で、また無線同報で受信され、同盟支社局を通じ滿洲國通信社によつて同國內に頒布されてゐることはいふまでもない。 |
42 | |
同盟の使命と活動
| P.0043 | 1944年 | 【本文】|第七 世界報道戰上の同盟|海外特派員の活躍| 今次の世界大戰勃發以來、全世界にわたる同盟の通信網と、各國代表通信社との世界的連繫はますます完全にその機能を發揮してきた。| 殊に帝國の對米英宣戰とともに世界報道戰上における同盟の使命は飛躍的に重要性を加へ、その活動は一層白熱化した。卽ち、開戰と同時に米のA・P、U・P、英のロイターとの關係は斷絶し、敵國領土內にあつた同盟支局駐在の特派員は全部監禁され、その後送還されたため同盟のニュース蒐集網は著しく制約されたが、それだけに却て世界動向殊に敵國側の情勢に對する報道は重大となつたので、盟邦の支局を强化するとともに、中立諸國に特派員を增派して戰時報道の完璧を期した。現在、伯林をはじめ歐洲諸國にはモスクワ(ソ聯)、ローマ(伊)、ヴィシー(佛)、ストックホルム(瑞典)、チューリッヒ(瑞西)、リスボン(葡)等、近東にはイスタンブール(土)、南米にはブエノスアイレス(亞爾然丁)等、九支局を置き、二十七名の特派員が或は空爆下に身を曝らし、或は彈雨を冒して從軍し、變轉極まりない世界動亂のまつただなかに、不自由と激勞を忍びつつ、ひたすら祖國の勝利のために對敵情報挺身隊として、日夜活躍してゐるのである。| これら在外支局の特派員は、駐在國の國家代表通信社と緊密に連絡し、その通信網を通じて集まるニュースを自己の嚴正なる判斷をもつて觀察し取捨するほか、自から活動して取材し、これを本社に打電する。多くは無線電信で直電するが、時には締盟通信社の世界同報の中に對同盟ニュース |
43 | |
同盟の使命と活動
| P.0044 | 1944年 | 【本文】|として挿入したり、場合によつては、有線電信を併用することもある。また時には、たとへば伊太利の降服によつてローマを撤退する特派員が、移動の途中から、當時の伊國內の情勢を伯林支局に送り、同支局から東京に打電せしめるといふやうな、機に臨んであらゆる速報の手段を機敏に講ずるのも特派員のはたらきである。|通信の世界的連繫に戰ふ| 同盟はそれ自身强大なる通信組織を完備し、全世界に强力なる發言權を有するのであるが、その機能を更に高度に發揮せしむるものは各國代表通信社との連繫である。これについては旣に「通信社の世界的連繫と同盟」の項で述べてあるので改めて繰り返すことはないが、要するに各國の放送する對外同報は悉く同盟本社に受信されて、世界のニュースはたちどころに集まり、同時に同盟の對外放送も各國の通信社が受信して世界的に頒布される。ここにニュースの世界的交流が行はれ、報道思想戰がこれによつて遂行されるのである。この活動は一見何らの手がかりもなささうに見える敵國側との間に寧ろ尖銳化してゐるのである。卽ち敵國側との通信關係は、勿論開戰と同時に斷絶したのであるが、然し同盟は敵性諸國の動向を知るに些の不便をも感じない。米のA・Pや、英のロイターが世界に同報してゐるものが悉く同盟に捕捉されるからである。勿論これには多分に敵側の謀略も宣傳もあるのであるが、然しそれによつて彼らの內部を窺ふには十分であるし、また一般には前にも述べたやうに、嚴重な檢討を經た上で報道されるのであるから敵の謀略に對する防壁は完璧ですこしも不安はない。同時に同盟の |
44 | |
同盟の使命と活動
| P.0045 | 1944年 | 【本文】|對外放送も敵國側で悉く受信してゐることも前に述べた通りで、彼らはなるべく自國に有利な點のみを報道しようと努めるには違ひないが、眞實は何處へいつても、またいかにしても破壞されることがない。道義日本のニュースは日々敵國民の肺腑をつき、その心奥に深く浸透してゐるのである。| かくして同盟は世界通信連繫の最强力者として、自からの眼をもつて世界を見、自からの口をもつて世界に語つてゐるのであるが、わづか十數年前まで英國ロイターの支配下に世界情勢の報道を受け、その思想謀略の蹂躙にまかせられてゐた日本、一言半句も自からを世界に語ることのできなかつた日本、それとくらべて、日本國力發展の當然とはいひながら、その餘りにも大きな躍進に、顧みて今昔の感にたへないのである。|同盟本社の機構|社長|常務理事|常務監事|總務局|庶務部 人事部 經理部 資材部 出版部|編輯局|政經部 社會 地方部 東亞部 外信部 寫眞部 整理部 文化部|海外局|企畫部 大陸部 華文部 歐米部 情報部|經濟局|內經部 亞經部 外經部 業務部|聯絡局|通信部 電務部 航空部 發送部|戰時調査室|技術研究所|印刷所 |
45 | |
同盟の使命と活動
| P.0046 | 1944年 | 【本文】|第八 同盟ニュースの世界的反響|敵國側に强力に浸透| 今次の大戰勃發以來、電波による報道思想戰は激甚を極めてゐるが、この中にあつて日本を代表して立つ同盟のニュースはいかなる反響を喚び、いかなる威力を發揮してゐるか。| ひと口にいへば、日本に關する世界の反響はすべて同盟ニュースによるものであるといつても過言ではない。日本の對外報道の主體は同盟の無線同報であるからである。それは盟邦中立國はもちろん敵國側にまで强力に浸透し、彼ら戰爭指導者及びその國民の間に大きな反響を起してゐるのである。いま具體的な實例を見るために米國を主として述べる。これは開戰と同時に監禁され、のち歸還した本社特派員の齎らした資料によつたものである。|威力を發揮する無線同報| 米國で現在新聞紙に揭載され、ラジオで放送される日本のニュースは、その殆ど全部が同盟の對外無線同報卽ちモールス符號による電信放送である。この無線同報はA・P、U・Pの二大通信社をはじめニューヨーク・タイムス、その他有力新聞社及びC・B・S、N・B・C等の放送會社が各自受信し、更に全米の通信社、新聞社に供給されてゐるのであるが、それには「東京」の發信地名及び發信日附の次に「この記事は日本側の電信放送ニュースによる」とことわつてある。| 敵方の發表ニュースである以上、米紙がこれをなるべく小さく簡單に扱はうとするのはむしろ當然であるが、しかし「東京」の名を附した |
46 | |
同盟の使命と活動
| P.0047 | 1944年 | 【本文】|日本のニュースは連日全米の新聞紙上に現はれてゐる。これが悉く同盟の無線同報によるものなのである。ニューヨーク・タイムスを例にとつて見ると、開戰後七ケ月の間に揭載された同盟のニュースは每月平均九十乃至百項を下らないのである。勿論これをもつて滿足すべきではないが、世界的ニュースの氾濫してゐる米國の新聞紙とすればこの揭載率をもつてしても思想戰上大きな戰果といへるであらう。|對敵戰果の實例| 一二の例をあげると、シンガポール陷落前後敗戰を蔽ふ英國側の前線ニュースは日每に少くなつたが、これに反し同盟のニュースがどしどし電信放送によつて傳へられるや、米國の新聞は一齊にこれを第一面記事として揭載したのであつた。シンガポール陷落の第一報は發信地こそロンドンとなつてゐたが、これは同盟から放送された日本側發表のものだつたのである(寫眞參照)。その後の續報も無論同盟電の獨占するところであり、殊に痛快なのは二月十八日東京で催されたシンガポール陷落戰勝祝賀會の模樣を詳報した同盟ニュースが長々と米紙に揭載されたことである。| 比島作戰が最後の段階へ入つた頃には、米紙は全く同盟のニュースに賴らざるを得なくなつた(寫眞參照)。これはシンガポール陷落前後を通じて東亞の戰局ニュースを日本にたよらねばならなくなつた英國の苦境と、まさに好一對である。| 米國のデマ宣傳を同盟ニュースによつて粉碎した例は枚擧に遑ないが、一例をとれば珊瑚海海戰は米國の一方的勝利かのごとく宣傳してゐたところ、わが大本營の發表によつて敵の損害 |
47 | |
同盟の使命と活動
| P.0048 | 1944年 | 【本文】|對敵戰果の實例|①シンガポール英軍の無條件降伏|②ミンダナオ軍の降伏|③コレヒドール風前の燈火|④特殊潜航艇の戰果 |
48 | |
同盟の使命と活動
| P.0049 | 1944年 | 【本文】|は戰艦一、航空母艦二、巡洋艦一擊沈、戰艦、巡洋艦、驅逐艦多數擊破といふ眞相が同盟の電信放送によつて傳へられるや、米紙はこれを揭載して米當局の發表が全く僞瞞であることを米國民の前に暴露したのである。| 東條首相の重要聲明、陸海軍當局の談も同盟ニュースによつて米紙に揭載され(寫眞參照)、またグヮム、ウェーク兩島の米軍俘虜に關する同盟ニュースなども米國民の所謂ヒューマン・インタレストを衝いた點で、米紙によく揭載された。| また同盟から歐洲向に放送されたものが、樞軸國及び中立國によつて再放送され、それが米紙に揭載されるものも多い。これは何かの事情で、直接日本からの放送を受信できなかつた場合、歐洲からの再放送を使用せねばならぬほど日本のニュース源に枯渴してゐることを示すもので、この極端な例としては、同盟の歐洲向佛語放送を米國で傍受して揭載してさへゐるのである。|東條首相の聲明 |
49 | |
同盟の使命と活動
| P.0050 | 1944年 | 【本文】|敵の宣傳反攻を完封| 以上は米國を例としたものであるが、推してもつて全斑を窺ふに足るべく、事實英國においても米國と全く同樣、同盟のニュースは細大洩らさず受信され、ロイター通信社によつて新聞社、放送局等に供給されてをり、重慶でも同盟ニュースを全部受信、これを印刷に附して每日政府その他の要人に配附されてゐる。| 盟邦、中立國等において同盟ニュースが受信されてゐることはいふまでもなく、更にこれら諸國が再放送することによつて、その波紋は周密に世界の隅々にまで徹し日々强い反響をよんでゐるのである。| 然しながら、東洋に絶對の地位を誇つた英のロイター、これに割りこんでゐた米のA・P及びU・P等米英思想侵略の先鋒が、今日東亞の地域より退却し去つたとはいへ、多年培つたその地步と傳統は容易に輕視すべからざるものがある。現に英國はロイターを通じて依然として西亞から印度、濠洲、支那にまでその魔手をのばし、米國はA・P、U・P兩通信社を通じて旣に南米を侵し更に濠洲を征して太平洋地域に進出し、兩々相俟つて東亞の外廓に思想戰の陣を布き、虎視眈々反攻の機をねらつてゐるのである。すでにわれは世界に毅然たる地步を占め東亞に鐵石の地盤を固めたとはいへ、もし現狀に甘んずるごときことあらば忽ち敵の乘するところとなるは必至である。かかる敵の宣傳反攻を完封し、思想戰においても絶對不敗、必勝の地位を確保するは同盟通信社の使命である。| わが同盟通信社は、不斷の努力をもつてその機構の充實强化をはかり、この光榮ある使命完遂に邁進しつつあるのである。 |
50 | |
同盟の使命と活動
| P.0051 | 1944年 | 【本文】|第九 同盟の經濟及び時事通信|思想戰遂行の一翼| 同盟は新聞社、放送局等に一般ニュースを供給するほか、日刊の「經濟通信」及び「時事通信」各數種を發行して、わが國產業經濟界並びに一般有識階層に對し、一は內外の產業經濟の動向を傳へてその進むべき途を示し、一は世界情勢の各般にわたり更に廣く深き智識を供與して、戰時生產力の增强と時局認識の徹底に大きな寄與をしてゐる。これらの通信も亦思想戰の一翼として力强くはたらいてゐるのである。|經濟界の羅針盤| 同盟の經濟ニュースは、一般ニュースと同じく、世界的通信網の機能發揮によつて廣汎にして正確迅速、常に世界情勢の動きを正しく指向して、古くよりわが國經濟界の羅針盤たるの傳統と權威を有してゐるのである。| 殊に最近わが國が自由主義經濟より統制經濟へ、更に全面的戰時經濟へと突入しためまぐるしい轉換期に當つて、よくその指導性を發揮し來つたのであるが、いまやわが經濟界が轉換より建設へと移行するにあたり、同盟の經濟通信もこれに卽應して、一大轉換を決行した。卽ち全經濟界が從來の利潤追求より國家的企業經營へ、株の騰落より生產の增强へ、徒らなる競爭より質實なる科學的研究へと轉換せるに對し、同盟の經濟通信も、商品、株式、金融等の市場を中心とした自由主義的報道より、國家戰力としての各種產業を重點とした專門的報道へとその指導性が著しく强化されたのである。| このために新たに活版印刷による日刊の「產業別通信」 |