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新聞聯合社の事業
| P.0001 | 1935年 | 【本文】|第一章|組織、陣容及職制並に通信施設| 新聞聯合社の事業の全貌を捕捉するがためには先づ其の組織、職制並に通信施設に就て其の大略を知る必要ありと思考するを以て、左に其の槪要を揭ぐべし。|第一 組織(左記組合規約及細則參照)| 新聞聯合社は新聞社のみによつて組織さるゝニユースの蒐集頒布を目的とする民法上の組合にして其の特徴とする處は、|組合規約|一、組合員を日刊新聞社に限り、新聞社以外のものゝ經營又は編輯に容喙關與を許さざること、|二、營利を目的とせず、利潤の分配を行はず、唯能ふ限り正確公平なるニユースを最も合理的且つ經濟的なる方法にて蒐集し、之を實費にて組合員に供給することを主たる目的とすること、|三、新聞通信事業の外、商取引に從事する個々の購讀者に供給する經濟通信事業、其の他新聞通信事業 |
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新聞聯合社の事業
| P.0002 | 1935年 | 【本文】|を保育するために必要なる一切の事業を經營し得ること、|四、事業の性質上、組合總會に附議すべき事項を極度に限定して理事會中心主義を採ると同時に業務の遂行を迅速機敏ならしめんがため、理事會に附議すべき事項もなるべく業務執行の根本方針及組合員の負擔に直接影響ある重要事項に限り、日常の業務は從事員の任免を始め一切之を專務理事に一任するの制度としたること、|五、專務理事には組合員にあらざる第三者を選任することゝし、以て業務の執行に關し不公平なきを期したること、|等の諸點なるが、其の詳細は左記の組合規約及細則の條項に明かなるを以て之を省略し、玆には聯合社の組織さるゝに至りたる事情並びに聯合組織の根底をなす主義思想に就て簡單なる說明を試み、以て聯合精神の眞髓を會得するの便に資せんとす。|聯合の起因| 聯合の前身たる國際通信社は大正三年、澁澤榮一、井上準之助、高峰讓吉、小野英二郞、樺山愛輔、石井健吾、串田萬藏、米山梅吉、成瀨正恭氏等民間の有識者の主唱により、外務當局の賛助を得て我國最初の國際的報道機關として組織されたる資本金拾萬圓(全額拂込)の株式會社(始めは合資會社)にして、樺山愛輔伯其の社長となり、澁澤子其の他前記の諸氏夫々相談役、 |
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新聞聯合社の事業
| P.0003 | 1935年 | 【本文】|國際通信社|取締役及監査役等の役員に列し、當時米國のアツソシエーテツド・プレス(エー・ピー)の東京通信員たりし故ジヨン・ラツセル・ケネデイー氏を聘して總支配人とし、大に我國情を海外諸國に宣傳すべき意氣込みを以て其の事業を開始したるものなるが、此かる大事業は一朝一夕にして其の成功を見る能はざるは云ふ迄もなき處にして、殊に歐米先進國に後るゝこと五十年乃至百年にして始めて斯業に手を染めんとする我國が僅々拾萬圓の資金を以て、而かも外國人に其の經營を托する通信社を設け、之によつて歐米諸大國の大通信社と拮抗し廣く海外に我ニユースの供給市場を開拓せんと試むるが如きは、當時としては恐らく唯一最善の途なりしには相違なかるべきも、今日より之を見れば最初より無理なる企劃にして、偶々創立の直後、歐洲大戰の勃發に際會し一擧にして其の購讀収入を倍加、三倍加し得て收支相償つて餘りありし時期に於てこそ何等の問題をも生ぜざりしが、其の後財界恐慌の襲來に逢ひ、收入は漸減の徴を示すに反し支出はニユースの增加に伴つて膨脹の一路を逕り、財政危殆に頻し其の救濟の必要目睫の間に迫るに及び、業務遂行の當務者たるケネデイー氏と名義上の責任者たる重役諸氏並に外務當局者との間に屢々意思の疏通を缺き、國際通信社が豫期に反して單なるロイテルニユースの輸入機關たるに終り其の本來の目的たりし我國のニユースを海外の新聞に揭載せしむるの點に至りては殆んど無力なりとの不平不滿を唱ふ |
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新聞聯合社の事業
| P.0004 | 1935年 | 【本文】|る者漸く多く、社業の圓滑なる遂行は到底之を望み難き事態に陷れるは寧ろ當然のことゝ云はざるべからず。|「國際」の功績| 惟ふに故澁澤子始め前記民間の諸名士が、我國の國際關係の將來を憂ひ、他に卒先して國際通信社の創設を唱道し、私財を投じて我對外新聞通信事業の基礎を肇められたる愛國の赤誠と先見の明とに對しては、國民一般の永く銘記感謝すべき處にして、若し昔日の「國際」なかりせば今日の「聯合」もなく、從つて亦明日の「同盟」もなかりしなるべく、此の意味に於て國際通信社の國家國民に遺したる功績は寔に偉大なりしと云はざるべからず。| 然れども飜つて考ふるに、前記の諸名士は元來新聞の事業に何等切實の利害を感ぜざる實業界又は財界の人々にして、自ら國際通信社の經營指導に當らんとするの意圖は最初より之を有せず、唯國家奉公の一念より之に出資し、後援者たるの意味にて役員に名を列したるに過ぎざるを以て、自からも私かに飽き足らざる同社の事業に對し無限の責任と、際限なき救濟の責を負ふを回避すべきは當然のことなるが、他方ケネデイー氏の立場よりすれば、之等の重役諸氏にしても亦外務當局にしても斯業の實情に何等の理解なく、唯不可能事を求むるのみに急にして、將來其の目的を達成するに必要なる現實の後援支持を與ふるに冷淡なりとの感を抱くに至るも亦自然の人情にして、要するに國際通信社 |
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新聞聯合社の事業
| P.0005 | 1935年 | 【本文】|の組織には、第一に重役自身が社業の消長に切實の利害を感じ、身を挺して其の經營に沒頭するの|「國際」の弱點|德義上の責任なきこと、及第二に經營の衝に當る者が外國人なるがために、關係各方面と常に密接なる連絡を保つて意思の疏通を計り斯業に對する各方面の理解を增進せしむる能はざりしことの二大缺陷を包藏せるは爭ふべがらざる事實なり。因て此の缺陷を補ふべく、樺山社長は大正十年四月新たに岩永裕吉氏を同社の取締役に迎へ、關係各方面とケネデイー氏との中間に立つて双方の意思の疏通を計らしめ後大正十二年十一月ケネデイー氏が其の職を辭するに及び岩永氏を專務取締役とし國際通信社の業務を主宰せしめ、之によつて僅かに前記第二の缺陷は之を匡救するを得たりと雖、同社の根底に橫はる前記第一の弱點は如何ともするに由なく、此の組織を以てしては同社の前途に何等の光明を見る能はざること漸く明白となり、玆に從來井上準之助氏等によつて主張されつゝありし全事業を擧げて之を新聞社の經營に移すべしとの意見は遂に關係者一同の輿論となるに至れり。|聯合の設立と國際及東方の併合| 玆に於て大正十五年一月、國際通信社は東京、大阪の兩市に於ける當時の大新聞社たる報知、東京日日、東京朝日、中外商業、國民、時事、大阪朝日及大阪每日の八新聞社に對し、 |
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新聞聯合社の事業
| P.0006 | 1935年 | 【本文】|一、國際通信社の株主(當時の資本金三十萬圓、內拂込濟額二十萬圓、株主數約三十名)は其の拂込みたる株金の返還を請求せざること、|二、未拂込株金の徴收は之をなさゞること、|の二條件の下に國際通信社の資產及負債を前記八新聞社側にて引受け、其の業務を繼承經營すべき旨を交渉したる處、右八新聞社も國際通信社の事業の新聞界にとりての重要性と、且つは又其の有する重大なる國家的意義とに鑑み欣然之を應諾するに決し、米國のアツソシエーテツド・プレスの例に傚ひ、前記の八社(以下基本八社と稱す)を組合員とする日本新聞聯合社(後に新聞聯合社と改稱す)を組纎して國際通信社の事業及當時對支通信の事業に當りつゝありたる東方通信社の業務の一部を繼承し、組合員たる前記各社の共同經營の下に、爾今各社共用のニユースは能ふ限り此の機關をして之を取扱はしめ、以て各社の費用と勞力とを省くと共に、此れに由つて節し得たる經費の一部を削いて新設機關將來の發展を助長すべき計畫を立て、大正十五年五月一日を以て其の事業を開始せり。|聯合組織の根本義| 而して右基本八社が新通信社の設立に當り、從來の我國の通信社組織の慣例を破つて株式會社組織を捨て、特に新聞社のみを組合員とする非營利の組合組織を擇びたる所以は、 |
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新聞聯合社の事業
| P.0007 | 1935年 | 【本文】|(一) 元來通信社の取扱ふべきニユースは何等の意見觀測を加へざる事實の純客觀的描寫たるを本則とする處、此等の事實其のものは人類の國家社會生活の必然的所產にして、恰かも河川流水の如く何人も其の源泉に就て自由に掬汲し得べき筈のものなるを以て、天下萬民に代つて之を報道する者は其の正確公平を期する以外、他に何等の營利目的を有せざる機關たるを適當とす|(二) 通信社の生命は新聞社の信用に外ならず、而して新聞社の最も信賴し得る通信社は新聞社自身其の經營に參劃し其の編輯方針を決定し得べき組織のものたらざるべからず|(三) 通信社の發達は窮極に於て新聞社の協力に俟たざるべからざる處、それがためには新聞社の共同利益を計ることのみを其の存立目的とする通信社たることを必要とし自巳獨特の營利目的を有し、時に新聞社と反對の利害關係に立つ通信社には之を望み得ざること|等の思想に出でたるものなるが、此等の主張理論の誤にあらざりしことは、聯合が創設以來僅々十年にして以下に敍述するが如き驚異的發達を遂げ、而かも其成功の多くは聯合を組成する全國幾多の新聞社の後援支持に因りたるの事實に徴して明白疑を容れざる處なり。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0008 | 1935年 | 【本文】|新聞聯合社規約|大正十五年五月一日締結セル組合契約ヲ左ノ通リ改正ス。|「ニユース」ノ正確ヲ期シ、其ノ蒐集頒布方法ノ合理化ヲ計リ、以テ新聞社共通ノ利益ヲ增進スルタメ、非營利主義ノ組合ヲ組織シ其ノ契約ヲ締結スルコト左ノ如シ。|第一章 名稱及所在|第一條 本組合ハ之ヲ新聞聯合社ト稱ス。|第二條 本組合ノ事務所ハ之ヲ東京市ニ置ク。|第二章 目的及事業|第三條 本組合ハ組合員ノ協力ニ依リ內外「ニユース」ヲ蒐集シ、之ヲ各組合員ニ頒布スルコトヲ以テ目的トス。|第四條 前條ノ目的ヲ達スル爲メ、本組合ハ左ノ事業ヲ行フ。|一、海外及內地樞要ノ地ニ適當ノ機關ヲ設ケ、當該地方ノ「ニユース」ヲ蒐集シ、之ヲ各組合員 |
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新聞聯合社の事業
| P.0009 | 1935年 | 【本文】|ニ供給スルコト。|二、海外ノ「ニユース」蒐集機關ト協力シテ、國際的「ニユース」ノ交換ヲ行フコト。|三、本組合規約ノ定ムル處ニ依リ、組合員相互間ニ本組合ヲ通シ國內「ニユース」ノ交換ヲ行フコト。|四、我國ノ經濟界ニ必要ナル內外ノ經濟「ニユース」ヲ蒐集シテ一般需要者ニ之ヲ供給スルコト。|五、其ノ他本組合ノ事業ヲ達成助長スルニ必要ナル事業。|第三章 組合員|第五條 本組合ノ組合員ハ日刊新聞社ノ代表者及ヒ法人タル日刊新聞社ニ限ル。|法人タル組合員ハ組合員タル權利義務ヲ行フヘキ法律上代理人ヲ一定シ、之ヲ本組合ニ届出テ置クヘキモノトス。之ヲ變更シタル場合又同シ。|第六條 新タニ本組合ニ加入セントスルモノハ、本組合所定ノ書面ヲ以テ本組合ニ申出ツルコトヲ要ス。|前項ノ場合加入ノ諾否ハ理事會之ヲ決ス。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0010 | 1935年 | 【本文】|新規加入者ハ理事會ノ定ムル加入金ヲ本組合ニ支拂フモノトス。|第七條 本組合ヨリ脫退セントスルモノハ、三ケ月以前ニ其ノ旨書面ヲ以テ專務理事ニ申出テ理事會ノ承認ヲ經ルコトヲ要ス。|已ムコトヲ得サル理由ニ因リ本組合ヲ脫退シタルトキト雖モ、本組合ノ爲メ不利ナル時ニ於テ脫退シタルトキハ該組合員ハ本組合ニ對シ、脫退ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スヘキモノトス。|前項ノ場合ニ於テ組合員ハ其ノ組合ニ對スル一切ノ債務ヲ履行スル迄ハ組合員タルノ義務ヲ免カルヽコトヲ得ス。|脫退セル組合員ハ組合財產ニ對スル權利ヲ喪失シ、其持分ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得ス。|新聞社カ其發行ヲ中止シタルトキハ組合員ハ其ノ中止ト共ニ、當然本組合ヲ脫退シタルモノト見做ス。|第八條 本組合ノ組合員ハ理事會ノ定ムル割合及方法ニ依リ本組合ノ經費ヲ分擔ス。|第九條 本組合カ自己ノ「ニユース」蒐集機關ヲ有セサル地域ニアル組合員ハ當該地方ノ「ニユース」ヲ本組合ノ要求スル範圍及方法ニ依リ本組合ニ速報スルノ義務ヲ負フ。但シ本組合ハ該「ニユース」ヲ當該地域內ニ於テ公表セサルモノトス。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0011 | 1935年 | 【本文】|前項ノ地域ハ理事會之ヲ指定ス。|第四章 組合ノ機關|第十條 本組合ハ每年五月定時總會ヲ開キ、臨時總會ハ其必要アル場合ニ之ヲ開ク。|總會ハ專務理事之ヲ召集ス。總會ノ議長ハ開會每ニ總會ニ於テ選任ス。|專務理事ハ期日二週間以前ニ總會ニ附議スヘキ事項ヲ組合員ニ通知スルコトヲ要ス。但シ臨時總會ノ場合ハ此限リニアラス。|第十一條 組合員ノ總數ノ過半數ニ當ル組合員ヨリ其目的ヲ指示シテ總會ノ召集ヲ請求シタルトキハ專務理事ハ遲滯ナク臨時總會ヲ召集スヘキモノトス。|第十二條 組合員總會ニ於ケル組合員ノ票決權ハ各組合員ノ分擔スル組合經費月額金百圓ニ付一票トス。|第十三條 左ニ揭クル事項ハ總會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス。|一、本組合規約ノ變更。|二、其ノ他組合員ノ權利義務ニ重要ナル影響ヲ及ホスヘキ事項。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0012 | 1935年 | 【本文】|總會ハ決議ヲ以テ前項各號ニ揭ケタル事項ノ全部又ハ一部ヲ理事會ニ委任スルコトヲ得。|第十四條 總會ノ決議ハ出席者ノ票決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス。可否同數ノ場合ハ議長之ヲ決ス。|此場合ニ於テ議長ノ票決權ノ行使ヲ妨ケス。但シ組合規約ノ變更ハ總票決權ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ要ス。|組合員ハ他ノ組合員又ハ自已ノ社員ニ委任シテ總會ニ於ケル票決權ヲ行フコトヲ得。|第十五條 左ニ揭クル事項ハ專務理事ヨリ總會ニ報吿スルコトヲ要ス。|一、組合員ノ新規加入又ハ脫退ニ關スル事項。|二、組合ノ豫算並ニ決算。|三、其ノ他重要ナル事項。|第十六條 左ニ揭クル者ヲ以テ理事會ヲ組織ス。|一、本組合創立當時ヨリノ組合員(又ハ其ノ後繼者)ニシテ且ツ組合經費月額分擔金壹千八百圓以上ヲ負擔スル組合員ノ全部。|二、其ノ他ノ組合員中ヨリ組合總會ニ於テ無記名連記投票ニヨリ百票以上ノ得票ヲ以テ選擧サレタル者ノ內最高得點者ヨリ順次ニ前號ニ依リ理事ニナルモノヽ人數迄ノ者。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0013 | 1935年 | 【本文】|三、前二號ノ規定ニ依リ選任サレタル理事ノ過半數ニ依リ選任セラレタル本組合ノ從事員一名。|第十七條 前條第一號第二號ニ揭クル者ノ任期ハ二ケ年トシ、第三號ニ揭クル者ノ任期ハ參ケ年トシ孰レモ再選スルコトヲ得。|第十八條 理事會ノ決議ハ出席理事ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ要ス。|理事タル組合員本人又ハ法律上代理人ハ他ノ理事ニ委任シテ理事會ノ票決ニ加ハリ、又ハ豫メ自己ノ繼續代理人トシテ理事會ノ承認ヲ經タル社員ヲシテ理事ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得。|第十九條 理事會ハ左ノ權限ヲ有ス。|一、豫算並ニ決算ヲ議決スルコト。|二、各組合員ノ負擔スヘキ組合經費ノ分擔額及其ノ支拂方法ヲ定ムルコト。|三、本規約ノ遂行ニ必要ナル細則ヲ制定スルコト。|四、本組合ト外國ノ通信社トノ契約、其他本組合ノ權利義務ニ重要ナル影響ヲ及ホスヘキ契約ヲ承認スルコト。|五、本組合ノ業務ノ執行ニ關シ專務理事ニ建議シ、又ハ其ノ協議ニ與カルコト。|六、必要ニ應シ本組合員以外ノ者ニ對シ適當ノ條件ニ依リ本組合ノ「ニユース」ヲ供給スルコト。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0014 | 1935年 | 【本文】|七、組合員ノ加入脫退ノ諾否及ヒ加入金並ニ第九條所定ノ地域ノ決定及ヒ第十八條第二項代理人ノ承認、其ノ他總會ノ決議事項以外ノ重要事項。|理事會ハ其ノ權限ノ一部又ハ全部ヲ專務理事ニ委任スルコトヲ得。|第二十條 理事會ハ少クトモ每年四回專務理事之ヲ召集シ議長ハ其都度之ヲ選任ス。|理事ノ過半數ニ當ル理事ヨリ目的ヲ指示シテ理事會ノ召集ヲ要求シタルトキハ專務理事ハ遲滯ナク之ヲ召集スヘキモノトス。|第二十一條 本組合ニ專務理事一名ヲ置ク。專務理事ハ第十六條第三號ニ揭クル理事之ニ任ス。|專務理事ハ本組合ヲ代表シ、理事會ニ於テ議決ヲ經タル豫算ノ範圍內ニ於テ、又ハ第十九條第二項ノ理事會ノ委任ニ基ツキ本組合ノ業務ヲ執行ス。|但シ組合總會及理事會ノ決議ニ反スルコトヲ得ス。|第五章 會計|第二十二條 本組合ノ會計年度ハ每年五月一日ニ始マリ翌年四月末日ニ終ル。|第二十三條 本組合ノ財產ハ組合員ノ共有トシ、其持分ハ各組合員カ本組合ノ爲ニ出資シタル加入金 |
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新聞聯合社の事業
| P.0015 | 1935年 | 【本文】|及既ニ支拂ヒタル組合經費分擔金ノ總額ニ比例スルモノトス。|第二十四條 組合員ハ每月二十日迄ニ其月分ノ組合經費分擔金ヲ組合事務所へ拂込ムモノトス。|第二十五條 專務理事ハ每年四月末日迄ニ翌年度ノ事業計畫並ニ豫算ヲ理事會ニ提出シ其ノ承認ヲ經ルコトヲ要ス。|第二十六條 專務理事ハ每年十月末日迄ニ前年度ノ決算ヲ理事會ニ提出シ其ノ承認ヲ求ムヘキモノトス。|第二十七條 決算ノ結果、組合ノ收支計算ニ於テ剩餘金ヲ生シタルトキハ之ヲ次年度ノ歲入ニ繰入レ、不足ヲ生シタルトキハ專務理事ハ理事會ノ決議ヲ經テ其ノ不足額ヲ組合員ヨリ追徴スルモノトス。|第六章 罰則|第二十八條 本規約ニ違反シ又ハ本組合員ノ負フヘキ義務ノ履行ヲ怠リタルモノニ對シテハ、專務理事ハ「ニユース」ノ供給ヲ中止シ又ハ理事會ノ決議ヲ經テ之ヲ組合ヨリ除名スルコトヲ得。|但シ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0016 | 1935年 | 【本文】|第七章 附則|第二十九條 本組合ノ存續期間ハ昭和十四年四月三十日迄トス。|但シ總會ノ決議ニヨリ更ニ之ヲ延長スルコトヲ得。|第三十條 本規約ニ別段ノ規定ナキ事項ニ就テハ民法組合ノ規定ヲ準用ス。|第三十一條 本規約ニ據ル理事及ヒ專務理事選定ニ至ル迄ハ現任ノ理事及ヒ專務理事仍ホ其職務ヲ執ル。|以上|昭和五年四月三十日|新聞聯合社組合規約細則|第一章 組合加入|第一條 規約第六條ニヨリ新タニ本組合ニ加入セントスルモノノ提出スヘキ申込書ハ左ノ書式ニ依ル |
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新聞聯合社の事業
| P.0017 | 1935年 | 【本文】|加入申込書|(新聞社名)|(代表者名)|右者今般貴組合ニ組合員トシテ加入致度加入ノ上ハ貴組合規約及細則ハ堅ク之ヲ遵守致スヘク此段貴組合規約第六條ニヨリ加入申込候也|迫テ分擔金其他ハ左ノ通リ決定相成リ候樣希望致候|一、分擔金一ケ月金 圓也|一、通信種類及分量|一、通信方法|以上|昭和 年 月 日|(住所)|(新聞社名)|(代表者名)|新聞聯合社御中|第二條 前條申込書ニ署名スヘキモノハ新聞社カ法人ナル場合ハ其法律上代理人、法人ナラサル場合ハ其新聞社ノ代表權ヲ有スル者トス。|第三條 組合加入承諾書ハ左ノ書式ニ依ル。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0018 | 1935年 | 【本文】|承諾書|殿|昭和 年 月 日附ヲ以テ御申込相成候本組合ニ御加入ノ件承諾致候右理事會ノ決議ニヨリ御通知申上候也|追テ貴社ノ分擔金其ノ他ノ條件ハ左ノ通リ決定致候間左樣御承知被下度候|一、分擔金一ケ月金 圓也|一、通信種類及分量|一、通信方法|以上|昭和 年 月 日 (專務理事名)|第四條 新規加入者カ本組合ニ支拂フヘキ加入金ハ當該加入社カ負擔スヘキ組合經費分擔月額ノ三倍トス。但シ專務理事ハ理事會ノ同意ヲ經テ之ヲ免除シ又ハ其額ニ斟酌ヲ加フルコトヲ得。|第五條 前條ノ加入金ハ之ヲ六ケ月間ニ分納スル事ヲ得。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0019 | 1935年 | 【本文】|第二章 代理人|第六條 規約第十八條第二項ニ依リ理事タル組合員本人又ハ法律上代理人カ自己ニ代リ理事ノ職務ヲ行ハシムル繼續代理人ハ主筆、編輯主務者、營業主務者又ハ之ニ準スル社員ニシテ理事會カ事實上其社ヲ代表スル資格アリト認メタル者ニ限ル。|第七條 組合員カ其代理人トシテ總會ニ出席セシムル社員ハ支局長又ハ相當ノ資格アル社員ニ限ル。|第三章 組合員以外ノモノニ對スル『ニユース』ノ供給條件|第八條 新聞社以外ノ者ニ供給スル經濟「ニユース」ノ供給條件料金等ノ決定ハ現行ノ料金ニ大ナル改正ヲ加フル場合ノ外專務理事ノ裁定ニ委ス。|第九條 規約第十九條第六項ニ依リ本組合ノ「ニユース」ヲ供給スル本組合員以外ノ新聞社ハ之ヲ「契約新聞社」ト稱ス。|第十條 東京及大阪ニ於テ發行スル邦字「契約新聞社」ニ供給スル「ニユース」ノ通信料金ハ左ノ標準 |
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新聞聯合社の事業
| P.0020 | 1935年 | 【本文】|ニ據ル。|內信|(イ) 政治 一ケ月 金貳百圓|(ロ) 社會 〃 金貳百圓|(ハ) 經濟 〃 金壹百圓|(ニ) 運動 〃 金壹百圓|(ホ) 商況 〃 金壹百五拾圓|外信|(イ) 歐米電報 一ケ月 金四百圓|(ロ) 支那電報 〃 金四百圓|(ハ) 經濟電報 〃 金貳百圓|(ニ) 運動電報 〃 金貳百圓 |
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新聞聯合社の事業
| P.0021 | 1935年 | 【本文】|但シ朝刊ノミヲ發行スル新聞社ニ對シテハ前項料金ノ三分ノ二、夕刊ノミヲ發行スル新聞社ニ對シテハ二分ノ一トス。|第十一條 東京大阪以外ノ地方ニ於テ發行スル邦字「契約新聞社」ニ對シ「ニユース」ヲ供給スル場合ノ通信料金ハ左ノ標準ニ據ル。|電話又ハ電報ニ依ル場合。|外信一段ニツキ 一ケ月 金壹百圓以上|內信一段ニツキ 〃 金五拾圓以上|鐵道便又ハ郵便ニ依ル場合。|內外信ヲ問ハス 一ケ月 金五拾圓以上|第十二條 東京大阪其他ノ地方ニ於テ發行スル外字新聞ニ對シ「ニユース」ヲ供給スル場合及ヒ新聞社以外ノ者ニ一般「ニユース」ヲ供給スル場合ノ料金ハ專務理事之ヲ決定ス。|第十三條 專務理事ハ事情ニヨリ第十條及第十一條ニ規定スル料金ノ標準ニ適當ノ斟酌ヲ加フルコトヲ得。|第十四條 「契約新聞社」カ本組合ヨリノ「ニユース」購讀ヲ中止セントスルトキハ三ケ月以前ニ其旨書面 |
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新聞聯合社の事業
| P.0022 | 1935年 | 【本文】|ヲ以テ申出ツルコトヲ要ス。|第四章 地方通信機關|第十五條 規約第九條ノ地域ハ個々ノ場合ニ就キ專務理事當該組合員ト協定シテ之ヲ定ムルコトヲ得。|第十六條 法人ニアラサル組合員ハ其代表スル新聞社ノ實務ニ當ル者ヲシテ規約第九條ノ「ニユース」供給義務ヲ完全ニ遂行セシムルモノトス。|第十七條 必要ニ應シ專務理事ハ組合員ノ同意ヲ得テ其ノ組合員ノ社員中、特定ノ社員ヲ有給通信員トナスコトヲ得。|第五章 協議會|第十八條 「ニユース」ノ編輯、撰擇、送信方法其他ノ組合事務ニ關シ、專務理事ハ特ニ組合又ハ組合員ノ代表スル新聞社ノ當該事務擔當社員ヲ招請シ打合會ヲ催スコトヲ得。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0023 | 1935年 | 【本文】|第六章 專務理事權限|第十九條 本組合ノ職制、給與、會計其他ノ業務執行ニ關スル內規ハ專務理事之ヲ定ム。|第二十條 本組合ノ從事員ノ任免ハ專務理事之ヲ專行ス。但シ重要ナル責任ヲ負フヘキ從事員ノ任免ハ豫メ理事會ノ諒解ヲ經ヘキモノトス。|第二十一條 本組合ノ從事員中內信、經濟、外信及總務ノ事務ヲ主宰スルモノハ理事會ニ出席スルコトヲ得。但シ票決ニ加ハルコトヲ得ス。|第二十二條 專務理事事故アル場合ハ前條ノ從事員中ノ一名之ニ代リ專務理事ノ職權職務ヲ行フ。但シ其氏名ハ豫メ專務理事ニ於テ理事會ト協議ノ上之ヲ定メ置クヲ要ス。|以上|(昭和五年五月二十三改日ム) |
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新聞聯合社の事業
| P.0024 | 1935年 | 【本文】|第二 社員及職制|一、社員|現在聯合に職を奉ずる者は專務理事以下|總計 壹千貳百五十餘名にして、其の內|社員 約八百名|雇員 約四百五十名|にして、夫々以下列記する部局に配屬勤務す。|而して之を創業當時の從事員總計二百七名|社員 百三十八名|雇員 六十九名|に比すれば實に六倍の增加なり。|二、職制|現行職制の槪要左の如し。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0025 | 1935年 | 【本文】|(一)專務理事、總支配人|聯合全般の業務は組合規約、理事會及組合員總會の決議の範圍內に於て專務理事之を統轄遂行す。|猶專務理事の下に總支配人を置き、百般の事項につき專務理事を補佐するの外、專務理事事故ある場合其の職務を代行せしむ。|(三)東京本社|東京本社に左の六局を置き事務を分擔せしむ。|イ 總務局|總務局に左の二部を置く|一、庶務部 庶務、文書、人事、及他の局部に屬せざる事項を取扱ふ。|二、會計部 會計、用度に關する事項を取扱ふ。|ロ 業務局|業務局に左の三部を置く|一、廣吿部 |
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| P.0026 | 1935年 | 【本文】|二、事業部 新聞社との交渉聯絡に關する事項、及他局に屬せざる我社の經營する附帶事業に關する事項を取扱ふ。|三、寫眞部|ハ 內信局|內信局に左の八部を置く|一、政治部|二、社會部|三、經濟部|四、學藝部|五、運動部|六、演藝部|七、地方部 各地方新聞紙の特種の需要に適するニユースの編輯に當る。|八、特信部 特別通信(フイーチユア・サービス)の編輯に當る。|ニ 外信局 |
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| P.0027 | 1935年 | 【本文】|外信局に左の二部を置く|一、外信部|二、英文部|ホ 經濟通信局|經濟通信局に左の三部を置く|一、外國經濟部|二、內國經濟部|三、調査部|ヘ 聯絡局|聯絡局に左の四部を置く|一、聯絡部|二、發信部|三、發送部|四、タイプ部|(三)國內支社支局及通報員 |
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| P.0028 | 1935年 | 【本文】|イ 支社|左の三市に支社を置き各支社に必要の部を設け適宜事務を分擔せしむ。|大阪市、名古屋市、門司市|ロ 支局|左の二十五都市に支局を置き、其の重なるものには必要の部を設く|橫濱、濱松、豊橋、京都、神戶、岡山、廣島、下關、福岡、長崎、福井、富山、金澤、新潟、桐生、足利、前橋、仙臺、岡谷、高松、松山、靑森、函館、京城、臺北|ハ 通報員|支社支局所在地以外の左の四十五ケ所に通報員を置く|小樽、根室、凾館、靑森、秋田、盛岡、山形、仙臺、福島、宇都宮、前橋、水戶、土浦、北條、千葉、浦和、所澤、鎌倉、橫須賀、小田原、甲府、長野、松本、靜岡、大島、名古屋、大津、敦賀、金澤、奈良、宇治山田、鳥取、松江、德島、高知、佐世保、那覇、臺北、羅南、大邱、平壤、釜山、和歌山、堺、臺南|右の外、我社は組合規約及細則の定むる處により、組合員たる全國各地の新聞社より當該地方 |
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| P.0029 | 1935年 | 【本文】|のニユースの供給を受く|(四)海外支社支局通信員及特派員|イ 支社|上海に支社を置き、之に數部を設け適宜事務を分擔せしむ。|ロ 支局|左の各地に支局を置く|南京、漢口、廣東、北平、天津、靑島、新京、哈爾濱、奉天、大連、紐育、倫敦、巴里、伯林、モスコー|ハ 通信員|左の各地に通信員を置く|香港、福州、濟南、海拉爾、滿洲里、齊々哈爾、安東、芝罘、龍井村、山海關、羅府、桑港、晩香坡、ホノルヽ、マニラ、シンガポール、スラバヤ、バタビヤ、バンコツク|ニ 特派員|右の外臨時必要の地に特派員を派遣す。 |
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| P.0030 | 1935年 | 【本文】|第三 通信連絡施設|一、國內に於ける通信連絡施設(添付圖表參照)|國內に於ける通信連絡は原則として電話を使用し、特種の場合に限り電信を併用す。|沿革|元來我社の前身たる國際通信社は自ら地方新聞へのニユース供給のことに携はらず、從つて後年經濟通信の事業を橫濱、名古屋、神戶、下關、福岡等の地に於て營み又上海ロイテル支社との連絡を計るため長崎に支局を設置するに至る迄は、東京大阪間に一日二十乃至三十通話及神戶クロニクル社と東京本社間に一日三通話の豫約電話を有するに止まり、國內連絡施設と稱すべきものを有せず、從つて聯合が同社の事業を繼承したる當時も大阪東京間に四十五通話及前記各地間に主として經濟通信を送受するための一日二十通話程度の豫約電話を有するに過ぎざりしが、其の後各般の事業の創始發達と共に通信連絡の機構も著しく擴大され、現在にては國內通信連絡の幹線として、|現狀|專用線|東京神戶間に二回線、大阪福岡間に一回線の專用電話を設置して東京本社を始め、橫濱、名古屋、京都、大阪、神戶、岡山、廣島、門司、福岡各支社局を連繫し、日々大量 |
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| P.0031 | 1935年 | 【本文】|のニユースを送受しつゝあり。|豫約電話及新聞電報|右幹線沿道以外の都市との通信連絡は主として市外豫約電話により之を行ひ、北は北海道小樽札幌より南は高知長崎より京城に至る各主要都市の間五十二區間に總計一日八百五十八通話の市外豫約電話を設定する外、必要に應じ随時申込電話又は新聞電報を併用し通信連絡の敏速を期しつゝあり。|但し臺灣との連絡は主として新聞電報及豫約新聞電報により、必要に應じ內臺間無線電話を併用す。|市內專用電話|右の外東京大阪等の大都市に於ては市內ニユースの蒐集及新聞社へのニユース供給の迅速を期するため、重なるニユース源泉と我社との間、及我社と組合員たる新聞社との間に市內專用電話を設け、其の數七十回線に達す。|私設電信|又東京本社內に私設電信法による托送電報發受所(本社、東京中央電信局間二回線)を設け、專ら本社並に我社と締盟關係にある外國通信社の發受する電信を取扱ひつゝあり。|人員及經費|以上の通信連絡の機構は全國に亘り三百餘名の從事員により晝夜間斷なく運用されつゝありて、國內通信連絡に要する電話電信の經費年額は約二十二萬圓に上る。 |
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| P.0032 | 1935年 | 【本文】|二、海外との通信連絡方法|(イ)海外各地より我社へ打電さるゝニユースの通信連絡系統は左の如し。|(一)滿洲國|在滿各支局より直接東京本社に打電せしむ、但し急を要する重要「ニユース」はハルピン、新京、奉天、大連等より日滿連絡電話によることあり。|又大連よりの經濟通信は同地より直接大阪支社宛打電せしむ。|(二)支那方面|支那は他の諸外國と異り、我社自ら上海、南京、漢口、天津、北平の各地に於て內外の新聞通信を發行しつゝありて、之等各地相互間にもニユースの通信交換を行ひつゝあるを以て、東京に通報すべき此等各地のニユースは重複を避くるため原則として上海支社に於て之を取纏め、同地より日本電信局の和文電報を以て東京に打電せしむるも、急を要するものは重複を厭はずニユース發生地の支局より直接東京本社に打電せしむ。|右の外上海に於ては同地のロイテル支社がロンドンより受信する世界ニユース中、我がロンドン支局に於て記號を附したる部分を大北電信線により殆んど自動的に東京本社に轉電す。 |
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| P.0033 | 1935年 | 【本文】|(三)蘇聯邦|蘇聯邦のニユースは殆んど全部モスコウに於ける我支局又はタス通信社より東京本社に直電するも稀にニユース發生地より直接東京に打電せしむることあり。|(四)倫敦|倫敦のロイテル本社は過去一世紀に亘り、全世界のニユースの中央交換所として斯界に君臨しつゝありしが、近年米國のエー・ピー並にユー・ピー及佛國のハバス等の眼覺ましき發展に伴ひ、其の威望勢力は漸次衰微しつゝあるは否定し難き處なれども、百年の努力によつて築き上げられたる地盤と斯業に關する深き經驗とは容易に他の追随を許さず、依然國際通信事業界に於ける第一人者たるの地位を維持しつゝありて、我社も英本國は勿論加奈陀を除く英帝國自治領屬領を始め歐洲方面の一般ニユース並に歐洲全土の經濟通信は多く之を我ロンドン支局又はロイテル本社より東京本社に直電せしめつゝあり、但し此等の地域のニユース中急を要するもの或は重大なるものはロンドンを經由せず、當該地の締盟外國通信社又は我社の特派員通信員より直接東京に打電せしむるは勿論なり。|右の外我社はロイテルがラグビー無線電信臺より放送するニユースをも受信利用したき希望を |
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| P.0034 | 1935年 | 【本文】|有するも、現在にては技術上其の受信が困難なるがため未だ之を實行するに至らず。|(五)巴里|巴里よりは歐洲大陸及南米方面のニユースを同地支局又はハバス通信社より時々東京に直電せしむるも、最近に至りハバスの無線放送は著しく改善され、殊に極東方面に對する放送は殆んど我社の註文指示に從つて編輯されつゝあるを以て、其の利用率頗る高く內容に於ては殆んど直電に異ならず、之によつて我社は大に電信料を節約し得るに至れり。|(六)紐育|紐育よりは北米合衆國始め南米方面加奈陀方面の一般ニユース並に北米合衆國の經濟通信を我支局より東京本社に直電し、若しくはプレスワイヤレスにより放送せしめつゝあり。但し上記各地の運動ニユース及加州方面のニユースに限り之をエー・ピーの桑港支社より、又北米西海岸の諸市及布哇等の日本關係ニユースは當該地點の我社通信員より之を本社に直電せしむるは勿論、其の他の地點のニユースと雖も急を要するものは當該地より之を直電せしむ。|玆に特記すべきは紐育より放送するプレスワイヤレスにして、名は放送と稱するも其の內容は我紐育支局の編輯する我社のみを目的とする通信にして、事實に於ても外國に於て我社以外に |
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新聞聯合社の事業
| P.0035 | 1935年 | 【本文】|は之を傍受するものなかるべく此の意味に於てプレスワイヤレスは全然閑送直電と異る處なし|(七)猶此外に前記の如く支那に於ては各支局間に有線又は無線電信により間斷なく通信連絡を行ひつゝあり。|以上は我社の海外よりの通信連絡系統の槪要にして、我社が之がために支出する經費年額は約三十萬圓に達す。|(ロ)海外への通信|海外への通信は後に對外通信事業の章に於て述ぶべき我社の對外放送を除き、多くは我本社內に駐在する外國通信社の代表者が夫々各自の本社へ直接打電するもの、又は我社が此等外國通信社の依賴に應じ彼等の費用に於て其の指定する地點に直接打電するものなるを以て、我社は其の打電方法及經路等に干與することなし。|唯我社はロイテル、エー・ピー、ハバス、タス等歐米の諸大通信社との相互契約により、我社が特に海外に弘報せんとする帝國政府の公表、聲明、國務大臣の公式演說等に限り其の全文を我社の費用に於て相手方に打電し其の頒布を依賴し得るの權利を有し、現に外務大臣の帝國議會に於ける外交演說の如き年々此の方法により全世界に頒布しつゝあるが此かる場合には |
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| P.0036 | 1935年 | 【本文】|(一)英本國、亞弗利加全土、小亞細亞、ペルシヤ、印度方面への轉電頒布はロンドンのロイテル本社に、|(二)歐洲大陸諸國及南米諸國への轉電頒布は巴里のハバス本社に、|(三)北米全土及加奈陀への轉電頒布は紐育のエーピー本社に、|之を委囑するを常とす。|第二章|新聞通信事業|第一 國內通信事業(國內ニユースの蒐集及報道)|一、國內通信事業の起因|聯合社の前身たる國際通信社及東方通信社は共に外國ニユースの蒐集及對外通信のみを目的とする機關たりしを以て、之を引繼ぎたる我聯合社も、大正十五年五月其の事業を開始せる當時は何等國內ニユースの蒐集頒布を行ふ自己の機關を有せず、又當時の組合規約にも「本組合は海外通信事業を營むを目的とす」とありて、國內通信の事業は之を除外し、海外通報に必要なるニユースは帝國通信社及聯合を組成せる基本八社の提供に俟つことゝせる|ニユースの國際化と內信の必要 |
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新聞聯合社の事業
| P.0037 | 1935年 | 【本文】|が、凡てのニユースが國際化し、帝國外務大臣の議會に於ける演說答辯が其の翌朝全世界の新聞紙によつて評論さるゝは因より、彼のリンドバーク大佐の愛兒失踪事件が我國の新聞紙上に重要なる社會記事となり、我が神宮プールに於ける水泳選手の世界新記錄が全世界の新聞に運動欄のトツプを飾る重大ニユースとなりたる今日に於ては、國內通信卽外國通信にして自國のニユースの編輯通報を基調とせず、唯外國關係のニユースにのみ沒頭する通信社は、恰かも國內の實情と國民生活の實際に卽せざる外交と一般、我國大多數の新聞社の現實の需要を滿たす能はず、常に併讀通信たる地位に甘んぜざるべからざるのみならず、其の目的とする對外活動に於ても、外國通信社に對し威信を以て對等の折衝を行ひ我立場を有利に導き得ざるは當然の事理にして、往年國際及東方の兩通信社が所期の成果を擧げ得ざりし大なる理由の一は實に玆に存したりと云ふべく、又後年我聯合社が後に述ぶるが如く、對外契約を改訂して英國のロイテル、米國のアツソシエーテッド・プレス(エー・ピー)及佛國のハバス等と相並んで世界の新聞通信界の第一列に立つを得たるも亦主として我聯合社が八年の拮据經營になる國內ニユースの蒐集網と、之に伴ふ國內の新聞界に於ける强固なる地盤を提げて契約改訂の交渉に當りたるがために外ならず。要するに現代の通信社としては、國內通信外國通信其の何れかを缺く者は、對內的にも對外的にも到底大をなし能はざる不具者と云はざ |
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新聞聯合社の事業
| P.0038 | 1935年 | 【本文】|るべからず。|市內ニユースの蒐集|此の故を以て我聯合社は、事業開始後第一着手として國內ニユース蒐集の機關を建設すべき計畫を立て、大正十五年十一月之を基本八社の理事會に諮り、其の同意を得て、先づ東京に於ける諸官廳の所謂「玄關種」を此等八社のために蒐集すべき小規模の內信部を設け、本社と基本八社及此等の諸官廳との間に專用電話を架設し、僅々三千圓に滿たざる月額豫算を以て其の業務を開始し、稍其の業績の認めらるゝを俟つて漸次其の範圍を擴大し、翌昭和二年三月には、不完全ながら東京市內のニユースは略之を網羅報道し得るに至れり。|全國への進出|玆に於て我社は之を基礎として更に全國に其の通信網を擴張すべく、其の準備として從來我社の外國電報の地方紙への供給を一手に引受けつゝありし帝國通信社と我社との契約が昭和二年四月を以て滿了するを期とし、爾今我社自から外電及我社の蒐集にかゝる東京のニユースを地方紙約二十社に直接供給すると共に、之等の地方紙より當該地域のニユースの供給を受け、以て全國に亘るニユース蒐集組織を完備せんと企てたるも、當時我社の東京に於けるニユース蒐集施設未だ全からず、且つ我社の通信を購讀する新聞社の存せざる地方のニユースは之を接受するに由なく、爲めに地方紙より見れば我社の通信は、それの|地方新聞聯盟 |
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| P.0039 | 1935年 | 【本文】|みに賴つて新聞を製作し能はざる不備、未完成の通信にして、自然其の購讀を躊躇するもの多く、かくしては到底我社の國內通信網の完成は期待し得られざること明かとなりたるを以て、翌昭和三年四月、全國各地の有力なる地方新聞二十九社を說き地方新聞聯盟を結成せしめ、之と契約して、一方我社は更に中央に於ける陣容施設を充實し、又必要の地點には通信員を配置して全國の重要なるニユースは之を遺漏せざるだけの施設をなすことを誓約すると共に、他方、地方聯盟は右通報施設の擴充と、東京と各地方との通信聯絡の强化に要する費用として最少限度一ケ月一萬圓程度の購讀料の支拂を連帶保證し、玆に始めて全國に亘る通信網の體型を整ふるを得るに至れり。|其の後更に昭和五年四月に至り、我社は組合規約を根本的に變更し、從來基本八社のみを組合員と|聯合の開放と內信の完成|せる組織を改めて、全國の新聞社に之を開放したる結果、前記地方聯盟は自から解散され、之に屬する多くの新聞社は正式に組合員として我社に加入し、基本八社と相併むで我社の經營に參加し其の發達に協力することゝなり、玆に我社の國內通信事業は劃期的の飛躍を遂げ、爾來日進月步僅々五ケ年にして今や我「聯合內信」は其の質に於て、量に於て、將た又其のカバーする範圍地域に於て、他の如何なる通信社に比するも劣らざる陣容施設を具備するに至れり。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0040 | 1935年 | 【本文】|今日より回顧すれば國內通信事業の開設は我社にとりて實に乾坤一擲の企擧にして、殆んど徒手空拳、大小幾百の新聞社及通信社の競合する渦中に投じ、情實錯綜する斯界の難關を果して突破し得べきや否やは當時頗る疑問視せられたる處なるにも拘はらず、僅々十年を出でずして今日の「聯合內信」の大を成し得たるは、我國の新聞史上に特筆大書すべき稀有の事例と云ふべく、而して我社が此かる驚異的進步を遂げたる所以のものは一に我社を組織する全國幾多の新聞社が我社の內信事業は即ち自社の事業の一部なりとの觀念の下に其の發達を支持し協力せられたる結果に外ならずして、若し我社が普通の株式會社たりしならば到底かゝる急速なる成功は之を見る能はざりしは疑を容れざる處なり。|二、聯合の國內通信事業の現狀|現在、直接に國內ニユースの取材編輯の業務に携はる記者は內信局長以下|二百三十餘名にして|「純客觀的の立場よりする事實の適確卒直なる描寫」を編輯上の根本方針とし、|全國に跨り、組合新聞社二十八社、契約新聞社六十五社合計九十三の新聞社、並に日本放送協會及若干の官廳其の他の個人購讀者に對し、日々 |
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新聞聯合社の事業
| P.0041 | 1935年 | 【本文】|東京市內に於ては 三十段乃至五十段|其の他の地方に對しては 二十段乃至三十段|に上る多量の國內ニユースを供給しつゝあり。|但し我國の新聞界の慣例として、國內ニユースに就ては外電の如く「聯合」又は「電通」等の出所を附記せざるを以て聯合の國內「ニユース」が果して如何なる程度に新聞社に利用揭載されつゝあるかは的確に之を算定し難きも、聯合が平素全國の新聞紙に就て調査しつゝある處によれば、|東京及大阪兩市の新聞に於ては、供給量の約五十パーセント|其の他の地方紙に於ては 約八十パーセント|が當該地の何れかの一新聞又はそれ以上の新聞紙に揭載され、通信社としては殆んど他に比類なき揭載率を得つゝあり。|第二 外國通信事業(外國ニユースの蒐集及報道)|外國のニユースを我國に蒐集するには|(イ)外國の通信社と契約し、彼我の間にニユースを交換するか、又は手數料を支拂つて彼のニユ |
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| P.0042 | 1935年 | 【本文】|ースを我に通報せしむるか、或は|外國ニユースの蒐集方法と〓主々義|(ロ)自社の社員を外國に派遣駐在せしめて當該地方のニユースを取材打電せしむるか|の方法によらざるべからず。而して實際問題としては、前者にのみ賴ることは國策的見地よりするも、又ジヤーナリズムの見地よりするも面白からざるは勿論なるが、さりとて(ロ)の方法に徹底することは莫大なる費用と無限の適材とを要し、事實上不可能且つ不必要たるのみならず、此の方途にのみよるときは國際新聞通信界に孤立して、凡ての外國通信社と競爭關係に立つ結果、彼等を通じて我國のニユースを海外の新聞に揭載せしむるに便ならず。|故に實際問題としては、程度の差こそあれ如何なる國の大通信社と雖も此の兩方法を併用せざるはなく、聯合も亦其の方針をとり來れり。|本社外信局の任務|右の外、外國通信事業に最も大切なるは、我國に在りて外國より通報し來るニユースを受信し、之を邦文又は英文に飜譯編輯すると共に、常に外國の事件に就ての我國民の關心及興味の程度深淺を察知して適宜必要の指示を在外機關に與へ、內外呼應して外國よりの通報に冗電なく、而かも遺漏なからしむることにして、外國通信社關係及我社の在外支社局の活動と鼎立 |
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新聞聯合社の事業
| P.0043 | 1935年 | 【本文】|して、我社の外國通信事業の三大要素をなすものなり。|一、外國通信社との契約關係|前述の如く、如何なる國の如何なる大通信社と雖、その蒐集するニユース中、鮮なからざる部分は外國の締盟通信社の供給にかゝるものなるを以て、外國通信社との契約條件の如何は通信社にとりては最も重大なる問題の一たらずんばあらず。殊に經濟上、且つは海外派遣員としての適材に乏しき關係上多くの記者を海外に配置し得ざる我國の通信社は滿洲支那方面を除き、其の他の地域に於ては、我國に重大なる關係ある國際會議其の他之に類する重要事件ある場合は格別、平時に於ては其の受信するニユースの大半は外國通信社の供給に俟たざるべからざる事情にあるを以て、其の外國通信社との契約の條件如何は歐米諸國の通信社に比し一層の重要性を有するものと云はざるべからず。|世界通信社聯盟|然るに國際的新聞通信界には古くより英國のロイテル通信社を中心とし、米國のアツソシエーテツド・プレス(エー・ピー)、佛國のハバス等の大通信社を始め、三十餘ケ國を代表する各國の通信社よりなる世界通信社聯盟とも稱すべきもの存在し、之に加盟する者は自國のニユースを他の加盟社のために提供する義務を負ふと共に、加盟社以外の者に對しては一切之を遺漏せざるべき |
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| P.0044 | 1935年 | 【本文】|誓約をなし居るを以て、苟しくも全世界のニユースを普遍的に蒐集し、又我國のニユースを廣く海外の新聞紙に揭載せしめんがためには此の聯盟に加入することが必要にして、又得策なるが、之に加盟せる各通信社相互間の契約關係は必ずしも一樣ならず、各社の實力並に其の背景をなす所屬國家の國際的地位の如何により幾多の等差あり。從つて力なき者が突如として此の聯盟に加入するも、其の中心をなすロイテル、エー・ピー又はハバス等と對等條件の契約をなすは容易の業にあらず。結局我より與へ得る處少くして、彼に依存する處多き者が劣勢に立つは自然の數なりと云はざるべからず。現に大正三年、我國最初の對外的通信社として國際通信社の創設せられたる當時、ロイテル通信社と締結せる契約の如きは其の實例にして、之によれば、國際通信社は月額二千圓の手數料を支拂ひ、ロイテルの上海支社より一般海外ニユースの轉電を受くる外、必要に應じロイテルの本社又はロイテルと締盟關係にある世界各國の通信社より其の指定するニユースを直接通報せしめ、我國に於て之を一手に販賣するの權利を得たるも、他の一方に於て、前記の世界通信社聯盟に加入する各國の通信社とロイテルとの間に存する契約に於て、日本はロイテルの獨占的ニユース供給市場として承認され、ロイテルを通ずるにあらざれば爾餘の外國通信社は一切日本にニユースを供給し得ざることゝなり居たる關係上、國際通信社も|最初のロイテル契約 |
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| P.0045 | 1935年 | 【本文】|亦、此の原則を承認する意味に於てロイテル及其の締盟社より供給さるゝ一切の外國ニユースは、凡てロイテルニユースとして日本の新聞に公表することを約し、又國際通信社の總支配人はロイテルの日本に於ける通信員たるの任務に服し、ロイテル上海支社長の指揮を受け、其の訓令の範圍內にて日本のニユースをロイテル上海支社、其の他其の指令する地點に打電するの義務を負ふと同時に、國際通信社はロイテル以外他の如何なる外國通信社とも直接の契約を締結せず、第三國の通信社とのニユース交換は凡てロイテルを通じて之をなすべく、又ロイテルの承諾を得ずしてはロイテル以外の外國の通信社、新聞社又は個人に對して一切日本の「ニユース」を供給打電せざるべき旨を約する等、殆んど三等國の通信社と同樣の不平等極まる條件を甘受せざるを得ざりしなり。|第二回ロイテル契約|右第一回のロイテルとの契約は其の後大正十二年に至り改訂され、國際通信社は二萬ポンドの代償を支拂ひ、ロイテルを我國のニユース市場より撤退せしめ、今後日本帝國の領土は之を國際通信社の獨占的ニユース市場たるを承認せしむるに成功せるも、其の他の點、殊に我國のニユースを海外に通報する上に於て猶幾多の拘束を受け、我國の立場より見て到底滿足し能はざる偏務的の契約たるを免れざりき。 |
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| P.0046 | 1935年 | 【本文】|玆に於て我新聞聯合社は大正十五年五月、國際通信社の事業を繼承するや直ちにロイテル契約の改訂に志し、前記の如く先づ國內通信を開始して我國內の通信網を完備すると共に、支那に於けるニユースの蒐集機構を强化し、以て諸外國に對し我國は勿論極東方面の正確なるニユースを最も迅速に通報し得るの實力を養ふに全力を致し、之を交換條件として機會ある每にロイテルに對し契約改訂の折衝を試み、種々の階梯と幾多の迂餘曲折を經て遂に昭和八年九月に至り、ロンドンに於ける契約改訂交渉に於て、英米、英佛間に存する契約と其の內容を一にする彼我全然對等の契約を締結するに成功し、次で米國のエー・ピー、佛國のハバスとも同樣の契約を締結し、かくして我社は此等世界の三大通信社と併んで世界通信社聯盟中の最高位に立つに至れり。|現行の對等契約|猶玆に特に一言するの要あるは、蘇聯邦のタス通信社との契約にして、同社(當時はロスタと稱せり)とは大正十四年六月、即ち國際通信社時代、未だロイテルとの契約により第三國の通信社と直接契約を締結するの自由を拘束せられ居たる當時より、例外として既に前記三大通信社との契約と略同樣の對等契約を締結し、爾來滿期每に之を繼續して現在に及びたるが、ロスタ社が蘇聯邦に於ける新聞通信事業の獨占機關にして、電信電話等の使用に關しても獨占的特權を有し、蘇聯邦の關 |
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| P.0047 | 1935年 | 【本文】|する限り同社と契約するにあらざれば殆んどニユースを得る能はざる强き立場にあるを利用し、同社はロイテルと契約するに當り、日本とのニユースの交換にロイテルを通ずることを肯ぜず、直接國際通信社と之をなすべきことを主張し、ロイテルも遂に之に同意せざるを得ざりしがためにして、吾人の大に參考とすべき處なりと信ず。|右の諸大國の通信社と我社との間に締結せる新契約は、各國の特種事情に基く些末の特例的規定は別とし、主要なる事項は何れも略同一にして、現今世界的大通信社間に締結さるゝ契約の典型をなすものなるを以て、今左に其の要點を摘記すべし。|(イ)兩當事者の本社又は主なる支社に存する一切のニユースは、自國のニユースたると外國のニユースたるとを問はず、何時にても之を相手方の代表者の自由使用に供するは勿論、相手方の要求により其の全部又は一部を相手方の本社又は支社宛直接に打電すべきものとす。但し此の場合に於ては打電すべきニユースの種類、範圍、分量等に就ては嚴格に受信社の指示する處に從ふべきものとす。|(ロ)兩當事者は相互的に相手方が無線電信により諸外國に放送する「ニユース」を自國の領土內に於て獨占的に受信し公表することを得るものとす。 |
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新聞聯合社の事業
| P.0048 | 1935年 | 【本文】|(ハ)兩當事者は相互的に相手方の派遣せる代表者及記者に對し、其の本社內に於て事務所を提供し、此等の代表者又は記者の職務遂行を容易ならしむべく凡ゆる便宜及助力を與ふるものとす。|(現在、東京聯合社內に代表者を派遣し居る外國の締盟通信社はロイテル、エー・ピー、ハバス及タスの四社にして、我より代表者を派遣しあるも亦此の四社なり)|右の外兩當事者の社員は世界何れの地に於ても「ニユース」の取材編輯に關し相互的に援助協力すべきものとす。|(ニ)兩當事者は相手方の所屬せる國家の領土を相手方の獨占的ニユース供給區域と認め、相手方の承諾なくしては一切自社のニユースを其の地域內にある第三者に供給せざるものとす。|前記以外の地域は兩當事者の自由市場とし、兩當事者は随意に其のニユースを當該地に供給し又は當該國の通信社とニユースの交換に關する契約を締結し得るものとす。|但し相手方と競爭關係にある通信社とはニユース交換の契約を締結し得ざるものとす。|(ホ)前記の相互的サービスは凡て無償たるべきものとす。|但し、サービスの分量其の他に著しき差異ある場合は別に協定する手數料を支拂ふものとす。|(ヘ)兩當事者は相手方の締盟社たる第三國の通信社に對しても、必要に應じ相互的協力をなすべ |
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新聞聯合社の事業
| P.0049 | 1935年 | 【本文】|きものとす。|(ト)當事者の一方より相手方に宛てたるニユースの電信料及放送ニユースの受信費用は原則として受信者之を負擔するものとす。|但し兩當事者は、自國政府の公式聲明、國務大臣の演說等にして、其の全文を外國に通報する必要を認むる場合は、自己の費用に於て之を相手方に打電することを得るものとす。|猶聯合は前記の諸外國通信社との契約の外、滿洲國通信社、波蘭のパツト其の他ともニユースの交換及相互的協力の契約を有す。|二、在外支社、支局、通信員及特派員|此の如く我社は諸外國の大通信社との契約により、居ながらにして全世界到る處のニユースを最も迅速に且つ經濟的に蒐集し得るの便宜を有するも、外國ニユースの大部分を外國通信社の報道に一任することは、假令それが我社の指示する方針、範圍及條件によつて打電さるゝにせよ、結局は外國人の取材描寫せる記事にして、我國民の要求に副はずして隔靴搔痒の感あるのみならず、時に不知の間に外國の宣傳に乘ぜらるゝの惧れなしとせず、故に列强の大通信社は何れも、一方外國通信社と契約して、全世界の重大なる出來事は悉く之を網羅して洩らさゞるだけの最低限度の保證方法 |
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新聞聯合社の事業
| P.0050 | 1935年 | 【本文】|を講ずると同時に、他方自社の優秀なる記者を全世界の樞要地點に配置して、なるべく自國の觀點に立つて描寫編輯せる記事を報道するに努めつゝあり。|殊に我聯合社の如く、國際通信社時代より對外的機關たることを主たる目的として組成されたる歷史を有し、且つ其れがために國家の補助獎勵を受けつゝある機關としては、此の點に就て一層の意を用ひざるべからざるは當然のことなるを以て、我社は夙に外國ニユースの蒐集に關しては左の根本方針を立て、終始其の實現に最善を盡し來れり。|(イ)支那の如く我國が重大なる利害を有し、且つ歐米諸國に比し凡ての點に於て有利なる地位に立つ地域に於ては、聯合社員のみを以て强力なる通信網を張り、苟しくも其の地域內のニユースの關する限り世界に於ける權威者たるを期し、外國の通信社をして我に依存するの必要と利益とを感ぜしむること。|(ロ)歐米に於ける締盟通信社の本社所在地、即ちロンドン、ニユーヨーク及パリ等より我國に打電する「ニユース」に關しては、假令我社の代表者の駐在する場合に於ても、一切のニユースを我社員のみにて取扱ふことは、言語、設備其の他の關係上、報道の迅速を缺く嫌あるのみならず、頗る不經濟且つ不必要なるを以て、單純なる具體的事實の報道は、我社の代表者の監督の下 |