Chus2-1054-000-a

2005

2　湊學氏所蔵秋田湊文書

1054

礼法書

219中～227上

（表紙）「　　禮法書　　　秋田金左衛門政季　」
一、目録に馬の毛付印を書候事、常の儀に候、佐目の書様無別儀候、尤馬一疋,＜wari 佐目印雀目結>か様に可有候哉、
一、主人江小刀なと参候事、無別儀候、尤つかの方を御取候様に可参候、銘の方上へ成へし、
一、主人江腰物参候事、無別儀候、是もつかの方ヲ御取候様に参候、只人に出候時ハ太刀のことくそへ、この上へ可成候、刀のむねの方を人の前へなる様に可出候也、
一、こい能の事、書たての分過候て、其後よりこい申、其時は底江まかりおり候て可申、但<rubi タヽシ>又依仁躰座敷よりこわれ候方も可有候也、
一、はかまきの祝言の事、其家の様躰可在之、先式三献等可被用之、又大名なとの儀ハ萬可替候、高下によりて不可有定候、
一、主人江茶なと参候事、無別儀候、かた手にハ臺を持、またかた手にては臺と天目を持そへたるか能、尤参候式如常臺計を持候、其まゝ主人の前に居候事あしく候、下座へ先罷立に受<rubi ジユ>用候て、又如前持候て返出候、
一、主人より脇物給候事、常の儀ニ候て、又拝領の様躰の事、無別儀候、給て則いたゝき候て御前を罷立、我さしたる刀をぬきて被下たるをさし、とく御前へ参候て御礼可申、
一、能の時小袖を大夫なとへ給候時、可遣覚悟の事無別儀、尤何候てモ様事下<matsu ■>かへを上へなる様にたゝみ、袖を前へ折返し候、左の手にかけ、ゑりの方を給人の前へなる様に遣候、
一、すわうぬきの時、ちこ・喝食ハ扇なと被出事あり、其時の持様の事、無別儀候、たてゝ持遣候、又取なをし、かなめの方を遣事も候、何も不被奉候、
一、かた衣を人に遣事、無別儀候、かたえりなと遣かことくにて候、手も下かへを上へなし候て、ゑりの方を人の前へなる様に渡候、
一、座敷より舞臺へかけノ躰可在之、式三献以下可被用、又大名なとの儀ハ時宜いろくに在之事、依高下不相定候、
一、簾中召出の事、扇をぬき、ひもを袖におさめ所ハ、小袖とはこうのあいへ入候、かたひらの時も内<bousho 同>前也、故実等在之、
一、月見花見の時、中のミの事、盆に花を入候て給候事あり、たへ候て其花をたの手にて取、下をすてゝ如元花を置候て、さて誰にもいたし申候、花の方へうしろをなし候ハぬ事、ほか酌も心明同前、月見の時も様躰無相替儀候、
一、あせのこいの事、只白き能候、あさき又ハ桜なとにそめ用人有、是ハ昔の候哉、今ハ白きか可然候也、
一、わきさしの事、老人の前へさし候て、出候儀ハ如何にて候歟、弥酌宮仕の時ハ猶以不可有之、内々にてハさもしんする歟、
一、主人父子御座候時、両所へ礼を申事あり、先親父へ申、さて又子息へ可申之、何對面の事、是又無別儀候、又太刀二振持参候て一度に御礼申事もあり、是略儀にて候、
一、みすの中より能を御こい候事、常の儀に候、但若輩の人なとこい候事あるへからす候也、
一、みすの前を素通候時ハ必手をつきて御礼可申、其時ハミすの方の手をつきて可申、主人の方を見給申仕候て御礼申候事、様躰可然、尤女中なと御座候時見ゑぬも能候、
一、みすのあけはつしの事、内へ巻候てかき申、かけ候かきハ候へ共、かけ候、是かみにてゆい候事もあり、可寄時宜候、又はつし申候事、是も無別儀候、
一、主人の供の時太刀の持様の事、右の事に持候て主人の左に居候、又馬上ニて持候時ハ右の手に持候、ちかき所へハ持、遠路へハ右にはき申候、公方様御成の時も此分にて候、
一、輿の時太刀の持様乃事、無別儀候、輿乃間ハ中間持候、御おり候時中間持たる太刀をなにかし請取候て持候、是も主人の左の方に可有候、その同の年輩分の人持候、又輿の中へも太刀を被入候、是も取出し可持候、
一、主人見物等の時太刀の持様の事、太刀是又無相替儀候、主人の近所に可有之、遠く有事不可然也、
一、太刀持なから主人に物申時ハ、太刀を右のひさにかいこみ、手をつきて可申也、
一、老人、主人へ太刀持参候事、無別儀候、尤右に太刀を持候て如常御前ニ置候時、左の手をも太刀のつかへそへ申候、又等輩へハ右の手にて手出申左の手をそへ候事ハ老人等への儀にて候、
一、主人の酌の時、若人之太刀被出候時、取次候て主人へ渡申事あり、太刀に刀を取そへ主人の右の脇へ可参申入、座敷御せはき時様躰も少可相替候ニて候、
一、老人そう者の事、先いかにもうやまい可申之、太刀目録以下○在之如常<rubi コトシツネ>請取候て、主人へ申たてなく座敷へ志やうたひ可申見参候ハヽ則太刀目録可書候、
一、等輩そう者の事、是又無別儀候、銀さのミ候へ、きんにハ不可在之、よききゝに可相計之、
一、猿楽田楽以下そう者の事、是又無別儀候、但　公方様猿楽の事は刷、又少相替たるの座の遊にハ有ましく候也、
一、同朋奏の事、是又無別儀候、公方同朋の様なとハ又様躰可有之、又同朋なりとも主人よりの使ならハ様少可替歟、是主人を賞翫にて候、
一、出家そう者の事、是又無別儀候、れうしに不可在也、東堂西堂なとは猶以放可申候、
一、書状披露の事、又箱に入候ハヽ取出し候て可懸御目候、又文箱のふたのあけ様の事、無別儀候、少わきむきてあけ候、又貴人よりの御書にて候ハヽ、文箱のふたそへ候て申いり候事も可在之、
一、書状之認様の事、様躰重々在之儀候間、難注分候歟、別紙ニ認置之也、
一、書状を人に渡事、名乗の方を人の方へなして出候、又よみ候時ハ人のよむ様に置てよみ候事もあり、又本々にわかかたへ字の本をなして如常よみ候て寄時候へハ、主人老人の御前にてハ字のかしらを此方のかたへなし候てよみたるもよく候、
一、女房衆への文候の事、是もそれ々々に様躰在之事、別紙御注置物也、
一、馬上にて供可召具覚悟の事、大方此分にて候歟、主人うつほを付ハ弓袋ハ先よく候也、雑色の在所の弓袋可在之、又小者ハ三人四人の間罷候、尤　公方様の御小者六人被召仕候間、下々の人ハ只三人四人の間能候、但依仁躰五人まても不苦候、尤又かせ者を召遣候時ハ、房小者をハいつれも皆々さきへはしりかし候て、其諸事かせ者をめしつれ候、十人候へハ五人つゝ左右へ分てめしつれ候、次に太刀ハ只一振可然候、尤但又遠所へハ中半太刀と小太刀是二ふり持候方も候、京都にて御はれの時ハ只小太刀一ふり可然候、又遠所へハ手鑓なとも不苦候、弓の事、是又可然候、
　　　　小者　弓袋持　　中間中間<bousho 弓>中間
<wari ゆかけ主人さらぬ時>小者　主人馬　 □（厩ヵ）者笠持
<bousho 打刀>小者<wari 長刀房>　中間中間<bousho 太刀>中間
一、らうそくの出し様の事、同志んの取様の事、無別儀候、先御前のより出し申候、其後御圓舞臺たるへし、御座敷のハ右の手に取持候、御圓も同前又舞臺のハ有明の臺にて候間、かた手に不合都候間、もつ手にて可持候、又志んの取様の事、らうそくのなたれを取て候て志んを可置候、臺なからそのまゝ<matsu 取物ニて候>取物ニて候、取おろし申候事ハ自由の儀に候、又取かへ候時ハろうそくに火をともし候て、右の手に持、左にてハ臺のをぬきてさしかへ候、前のをも火をともしなから持て罷有をも候て置申也、
一、ゑほしの事、年れいによりて相替候、又長こゆいの事、十七八まて着歟、但又人のせいにより、はやくきとまる事あり、平人ことく敷なかきこゆいハ不可然候、
一、刀の鋳様の事、不可定候歟、但ふちはくき志とゝめ斗金にてめぬき、かうかいハ志やくとう可然候、か様のをもつは候故、中へもさゝ れ候、惣別金作ハむかしハ御きんせいにて候、又わか衆なとハ少金作のも不苦候、尤是も可依人候、又太刀打刀ハ金作のも前により持候、

[註] 資料番号149。慶長16年頃、津軽高岡藩主津軽信枚に仕官していた秋田政季のもとを訪れ、父子初対面を果たした政季子息湊孫十郎盛季に対して、孫十郎盛季の秋田藩佐竹家仕官のために、当該冒頭採録1012～1021号各文書と共に、政季から盛季に譲渡された記録であるとみられる。永禄10年の年号は西国毛利領内で伊勢流礼法書を作成した年代であり、秋田政季はその写本を所持しており、それを子息孫十郎盛季に書写し与えたのであろう。